テクニカルライター求人をめぐるギャップ

1997年4月4日

今回は、とある企業の求人広告をめぐる話です。残念ながら、当研究所ではありません(笑)

募集職種:テクニカルライター

何はともあれ、今回の募集はテクニカルライターです。当研究所の生業でもあり、どんな基準で求人を行うものか、とても興味があります。

当社では、開発者向けの文書作成を行う、経験豊かなテクニカルライターを募集しています。この仕事は、ソフトウェアエンジニアとの共同作業、OSに対する新たなAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)ならびにUI(ユーザーインターフェース)のガイドライン作成、新しいソフトウェアのテスティングならびにマニュアル作成を含むものです。当社のテクニカルライターとして、OSをデザインする現場からOSの開発に関わることができます。他の人々と密接に協力して作業を進める能力だけではなく、自分自身で率先してプロジェクトを推し進める能力も求められます。他人が始めた仕事もやるように言われることもあるでしょう。

当社では、(1)卓越したライティング能力、(2)複雑なことを簡潔明瞭に表現できる能力、(3)プログラマーのためのライティングの経験、を持つ応募者を採用したいと考えています。C言語(C++がより望ましい)の知識も必要です。オブジェクト指向のプログラミングや、ユーザーインターフェースデザイン、そしてソフトウェアの開発プロセスに対して慣れ親しんでいて、グラフィックの感性とHTMLの経験もあればよいでしょう。ソフトウェアデザイン − つまりドライバ、グラフィック、ネットワーク、テレフォニー、システム管理、その他 − に対する技術的専門知識もあればより良いですが、応募者は多才多芸であって、何か新しいものを喜んで学び、書く人である必要があります。

テクニカルライターに求められる能力

どうでしょう? こんな要求を満たす人材はそうそういるように思えません。ただ、逆に考えると(これほどまでとは言わなくとも)テクニカルライターには技術分野を含む諸分野に対する深い理解、感性および論理性、さらにプラスアルファが求められるということではないでしょうか。現にこの会社はそう考えているわけです。

この要求は、実は正しいのではないかと思います。テクニカルライターは単なるマニュアル書きではいけないのです。マニュアルを書きながらユーザーインターフェースや基本的なデザインにまで(知識に基づいた)口を出し、ユーザーのために頑張らなければならないのです。これはハードウェアであろうとソフトウェアであろうと同じことです。現状の仕事を考えてみて「もう少し頑張らなければ. . . 」「他分野に対する勉強も継続しなければ. . . 」とわれわれ同業者は反省しなければなりません。当研究所でもインターフェースとプログラミングの基礎研究を始めなければ、と考えています。

この研究発表を読んでいただいている方は、少なくともテクニカルライティングや、わかりやすい文章を書くことに興味を持っていただいている方だと思います。皆様もその興味に加えて、もうちょっとだけ手を広げて、隣接する分野も見てみることをお勧めします。特に、デザインやインターフェース周辺がお勧めです。

求人広告の主は...

さて、この求人広告の主ですが、アメリカのBe社です。昨年の後半「Apple社と合併するのでは?」と大騒ぎになった、非常に優秀なOSであるBe OSを持っている会社です。Macファンの方はご存知かと思います。

やっぱりテクニカルライターに対する要求スペックの高いのはアメリカだった、という訳です。テクニカルライターという職種に対する彼我の認識の差は驚くばかり。頑張れニッポン!! ということでお開きにさせていただきます。

いかがでしたか?

今回は、Be社の求人広告をネタにして、テクニカルライターに求められる能力を考えていただこうという趣向で、いつもと変わったアプローチを取ってみました。

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