PDFがやってきた(3)

1998年5月11日

Adobe Acrobatの日本語版が導入されてから、ちょうど1年になります。PDFは思ったよりも急速に普及してきたように見えますが、普及の過程でその長所とともに短所も明確になってきたように思えます。

このあたりの事情をPDF自体の問題と、PDFをマニュアルにどう使っていくのかという問題に分けて、今回と次回の2回に渡って検討を加えていきたいと考えています。今回はPDF自体の問題について検討してみましょう(「PDFがやってきた(1)」「PDFがやってきた(2)」「PDFの可読性を考える」もあわせてご覧いただくと、全体像がより明確になるかと思います。あわせてご覧ください)。

PDFの現在

まず、現状でPDFがどのように使われているかを見てみましょう。

以上4通りが、現状でPDFが活用されている分野だといえるでしょう。
当初注目されていた、ムービーの貼り付けといった、マルチメディア関連機能がほとんど使用されていないことにご注意ください。

やはり、どう見えるかが問題

こうして現在の使われかたを見てみると、一部の用途を除いて、PDFにはやはり表示デバイス上でどう見えるのか、という問題が付きまとっていることがわかります。もっとも、電子ドキュメントの標準を目指しているPDFには、ある意味で当然の問題でもあります。
最初からプリントアウトして使ってもらうことを前提としないのであれば、表示デバイス上でPDF書類がどのように見えるのかについて、PDFの作成者がもっと良く検討しておく必要がある、というのが当研究所の見解です。

まず、ページ単位で1画面に全体が表示される必要があります。
閲覧ソフトのインターフェースが良ければ、それほど苦にしなくてもよい問題なのかもしれませんが、現状のAcrobat Readerでは画面の外にある文字を読むための操作が誤操作を誘発するため、できるだけ画面の外に文字があるという状況は避けなければなりません。

また、文字ということでいえば、やはり全体表示にしたときに12ピクセル四方の文字の大きさ(Windows: 9pt.、Macintosh: 12pt.)が必要だと思います。OSで使用する文字サイズでも、最低これくらいのサイズは取っています(明確に判別できる漢字を構成するには、12ピクセル四方以上が必要だと思われます。機会があればフォントメーカーの方に意見を聞いてみたいと思います)。
PDFでは文字を表示するときにアンチエイリアスをかけるので、12ピクセル四方というのはあくまで最低条件として考える必要があります。アンチエイリアスがかかると文字はひとまわり小さく見えます。

その上で、以前「PDFの可読性を考える」で検討した、見た目の文字の大きさにも留意する必要があることは言うまでもありません。

いかがでしたか?

今回は日本語版1周年を迎えたPDFの、現状の使われかたと問題点について検討してみました。どちらかというと現状の再確認という意味合いが強い研究発表となりました。次回はPDFでマニュアルを提供するときに注意すべき点、現状の問題点について検討する予定です。

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