本日ご紹介するのは、堀 栄三 著「大本営参謀の情報戦記 − 情報なき国家の悲劇」です。戦争末期に情報参謀として米軍の作戦行動を次々に読み当てたことから「マッカーサー参謀」との異名を取った著者が、「情報を収集し、判断するとはどういうことか」について自らの豊富な経験をまとめたものです。
情報(information)というよりも諜報(intelligence)的な話が多く、戦記に詳しくない方には多少取っつきにくいかもしれません。ですが、著者自らがまえがきで「企業でも、政治でも、社会生活の中でも情報がきわめて重要な役割を占めている今日〜」と記している通り、本書の内容は軍事だけでなく、広く社会一般に対して大いに価値があるといえます。
実際に「個々の情報はつかんでいたのに問題の全体を予測できず、あとで地団駄を踏むことになった」とか「将来の技術動向はこうなると情報を入れておいたのに、意志決定時にまったく判断材料にされなかった(で、案の定失敗した)」などという苦い経験をお持ちのかたには、特におすすめです。安価な文庫本ですので、多くのかたに読んでいただければと思います。(ISBN4-16-727402-7、文春文庫476円+消費税、amazon.co.jp)