マニュアル制作者のレベル低下を憂う

2001年11月 5日

いや、低下するほど元は高かったのか?という話は置いておきますが。

お付き合いのある制作会社の方と話していたところ、「仕様書を解釈して、まともな構成をイチから起こせる制作者が最近少ないんですよ」というような話になりました。比較的大きい制作会社さんは大方の案件を内部で制作できるのですが、やはりオーバーフローしたり手持ちのリソースではカバーできない場合なども発生することがあるわけで、そういう場合には外注することになります。前者のように単純なオーバーフローのような場合は問題が少ないのですが、後者のようにある程度のレベルを求められる場合が問題のようです。

家電製品もデジタル化が進む一方ですから、AV(オーディオ・ビジュアル)だけでなくコンピュータやネットワーク絡みの内容まで押さえておかないと、まともなマニュアルを制作することが困難になってきています。メーカーのマニュアル担当者レベルでさえ脱落しかかっている方が多い状況ですから、実力のあるマニュアル制作者であれば、内容的な面に関してもイニシアチブを取ることが十分可能になってきています(実際にはそのレベルの人材はほとんどいないようですが)。また、内容理解という面だけでなく、製品の開発期間の短縮による制作工程の負荷増大にも耐えられる制作パワーも必要になってきますので、マニュアル制作者に求められる能力はますます厳しくなってきていると言えるでしょう。

それでは実際のマニュアル制作者はどうなのでしょう。これが実は、呆れるほど意識レベルが低いのです。不景気だから仕事が少なくなっているとか、ツールの使いこなしとか、言葉の意味がどうだとか、あいかわらずその程度のレベルの話でしか盛り上がれない。工程意識は皆無。ユーザー志向といいながら昔の方法論から脱却できず、相変わらずユーザータスクベースで情報を構成できない。最新技術動向に対する不感症。これではお話しになりません。以前ここでも苦言を呈したことがありますが、あれから状況はますます悪化しているように思えます。技術が高度化/複雑化する中でTCに関わる人材の重要性は高まるはずなのに、こんなレベルで一体どうしようというのでしょう?

紙媒体をはじめとする、従来形式のマニュアルの限界を見限ってWebサイト関連に転身しようとしているところも多いようですが、上記のような問題を抱えたままで転身できるほど甘くはありません。特に情報構造デザインにも注目が集まっている現在、説得力のあるポリシーでもって、コンテクストに応じて情報を構成する能力なしに、他業界から転身する意味がどれだけあるものやら。もちろん最終的に発生する文章のリライトレベルの仕事だけしていくということであればそれでも良いのですが、それって何か違うんじゃない?と思う今日この頃でございます(週明け早々、ネガティブな話題で失礼いたしました)。

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