情報設計の脱MECE化がファセット分類

2003年12月23日

縁側*ccで何度か取り上げられている(その1その2 他)「ファセット分類(Facet Classification)」なんですが、いまいち本質が掴めずに、いろいろと考えあぐねていました。

Googleで検索してみても、情報アーキテクチャ的な意味以外での使用法もあるようですし、「Web情報アーキテクチャ」中の説明もピンと来ません。ただ、図書館情報学に携わっている方がファセット分類の効用を主張されている節もあるようで、この辺にヒントがあると考えること幾星霜(嘘)、ファセット分類の本質は非MECE(mutually exclusive, collectively exhaustive、 互いに重ならず、すべてを網羅する )にあることに、やっと思い至りました。

一般的には、「ファセット分類はディレクトリ型分類とは違って、属性中心の分類である」と表現されがちですが、カテゴリを中心にディレクトリ型のツリー構造を構築することもできますので、これでは適切な規定とはいえません。「Web情報アーキテクチャ」の記述にも、この混乱が見られるようです。正しく規定するのであれば、ファセット分類とは「1つの情報実体はツリー構造のうちの1つの位置だけを占めることができる」(MECEの考えかたそのもの)のではなく、「実体に付随する様々な属性を中心として情報構造を規定しているため、同じ情報実体が全体構造中に何度も出現できる」情報構造であると規定することが適当でしょう(pha::diary 2003年2月23日分も参考になります)。

ここでiPodを例にして考えてみましょう。iPodは据置型プレーヤーに対する携帯型プレーヤーと分類できますが、CDプレーヤーに対するMP3(AAC他)プレーヤー、再生専用機に対する録再機と分類することもできる訳で、これを無理に1つの分類だけに押し込んでしまうと、ユーザーの閲覧コンテクストによっては検索性に問題が出る可能性が高くなります。したがって、無理にディレクトリ型分類にこだわるのではなく、重複にとらわれずにユーザーの考える属性中心に情報を構成する必要が出てきます(この辺の問題については、「分類タグとは」の解説もわかりやすいと思います)。実際には重複情報を管理することは困難になるので、データベースを導入して情報を管理するケースの方が多いとは思いますけど。

さて、ここまで考えてきたところで、妙な符合に気付きました。

以前「MECE的マニュアルの限界」という記事を起こしたように、マニュアル制作の分野ではMECEの弊害が目立つようになっています。(今更ではありますが)ファセット分類が話題になるということは、情報アーキテクチャの分野でもMECEの弊害が強く意識されるようになってきたことに他なりません。

実際のWebサイトでは、データベースを利用した動的なコンテンツ管理やショートカット、関連情報という形でMECEの弊害への対策を行っているケースが多いように見受けられますが、まだまだ付け焼き刃な感がぬぐえません。したがって、情報設計の脱MECE化を当然の前提とした上で、どれだけユーザーの注目する属性中心の設計・表現ができるかどうかが、今後の情報設計・表現の鍵となってくるのではないでしょうか。

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