昨年頃かと思いますが、新宿のヨドバシカメラ マルチメディア館のコンピュータ書籍売り場に異変がありました。いきなりデッサン技法書などのデザイン専門書がコンピュータ書籍売り場に並び始めたのです。(おそらく)今年になってからかと思いますが、秋葉原のLAOXザ・コンピュータ館の書籍売り場も同じような状態になっています。
コンピュータを利用したグラフィックやWebデザインが一般化するにつれ、デザインの専門教育を受けた訳ではない人達もこの分野に興味を持つようになりました。しかしコンピュータ関連書籍は上っ面のテクニック技法書ばかりで、本質的なデザインの入門書はほとんどありません。できればテクニック集だけでなく基本書も購入して参考にしたいという、こうした消費者のニーズをおそらく読みとったからこそ、前述のような売り場の変化が現れたわけです。実際にビジネスとして売り上げ貢献に直結しているかどうかは不明ですが、特定ジャンルの書籍購入に関してはワンストップ・ショッピングが可能になった訳で、それなりの販売機会の増加にはつながっているであろうことが推測できます。
さて、こういった考えかたはECの世界にこそ有効だと思うのです。例えば、タブレットを購入するユーザーは、デザインの専門書を購入する確率が高いのではないでしょうか? コンピュータとソフトウェア、周辺機器だけでなく、ユーザーが実際に特定の場面で必要になる製品は、もっと多いと思うのです。実際の店舗では階毎に売り場が分かれていたり店舗が分かれていたりする訳で、ユーザーは途中で購入した商品を抱えてあっちこっちへ移動する羽目になります。しかし、実際の使用場面ごとにつながりのある商品で売り場が構成されているならば、こんな苦労はなくなります。消費者のライフスタイルを意識して、ブランドや商品ジャンルにとらわれずに売り場を構成するということが小売業で注目されているようですが、これも同じような流れにある現象といえるでしょう。
しかし実際には、一つの店舗でこうした品揃えを実現することは困難であったり、さまざまな(笑)しがらみで理想的に話が進まないことが多いようです。ですが、ネットを利用した個別商店の集合体であるショッピングモールには、本来そうした制限がないはずなのです。何故こうした個別商品カテゴリー群を越えて、ユーザーの実際の使用場面に即したカテゴリー横断的な販売システムを構築できないのでしょうか?(まあ個々の店舗ごとのエゴその他であることは十分予想できるのですが、ね。)
販売不振に悩むショッピングモール系のECサイトが多いようですが、基本的なユーザビリティの見直しだけでなく、ユーザーニーズを直接とらえた形態での販売を可能にしていくようなシステム刷新も重要なのではないでしょうか。