検索エンジンを自社のマーケティングに活用することを目的とした、SEO(検索エンジン最適化)と呼ばれるWebサイトの再構築が流行ってるようですが、以前からちょっと気になっていることがあります。
SEOのプロセスを詳細まで熟知している訳ではないので外している可能性もありますが、検索に使用されるキーワードを意識して情報を構成するという考えかたそのものに、漠然とした不信感があるのです。例えば、Googleでは見出しやリンク部分に含まれる文字列が検索結果に大きく影響する、つまりキーワードの配置場所として効果が高いと言われていますので、その辺を中心に文字情報をコントロールすることがまず重視されることになります。
ですが、そのような文字情報のコントロールによって、Webサイト内を回遊するユーザーへのわかりやすさが損なわれる可能性があります。つまり、キーワードが一般名詞として完全に認知されていない場合は、Webサイト内の情報カテゴリ名やナビゲーションのタイトルにキーワードを使用すると、使い勝手の面で問題が発生する可能性がある、ということです。これは何故かというと、キーワードのような特殊な名称よりも、一般的な言い回しの方が表現としてわかりやすいためです。
また、キーワード重視の姿勢がWebサイト全体の情報設計に影響を及ぼす可能性も出てきます。極端な例ですが、キーワードを元にした情報分類が強制されることで、ユーザーの動機を中心とした情報設計に影響が出る(ユーザーの利益と相反する)ことも考えられます。これらの問題を引き起こさないためにも、「SES(サーチエンジンスペシャリスト)に求められる素質」でも触れられているように、
WebページをSEO施策で改善する際にも、SEO施策後のページが、 ユーザーが見て違和感を感じないページなのか、ユーザビリティの観点からはどうかなど配慮し、SEOのためのSEOにならないようにしなければならない。
ことが非常に重要となってくる訳です。
検索エンジン経由のユーザーが多いというのは、確かにその通りです。ですが、検索エンジンへの最適化が(訪問後の)Webサイト内回遊への足かせになってしまうようでは、目先の訪問者数が増えたところで、総合的に見て得策とは言えないでしょう。そこまで承知の上で検索エンジンへの最適化を優先するのであれば良いのですが、果たしてどこまで理解されているのかは疑問です。現状の検索エンジンからの訪問者を増やすためには仕方がないとはいえ、本末転倒は避けて欲しいところです。
Yahooがページ検索をGoogleから独自エンジンYST(Yahoo Search Technology)に切り替えたことがニュースになりましたが、検索技術の仕組みはほとんど変わっていないようです。これはつまり、本末転倒の最適化が存在する余地がまだまだあるということです。このような問題を解消するためにも、Webサイトの情報設計がユーザーに最適化された状態でも、必要な情報を過不足なくスムーズに入手できる(=表面的な言葉の設定で検索結果が左右されない)検索技術が、一刻も早く登場して欲しいものです。