先日のJAGATのセミナーの午後の部を聴講して、RIA(Rich Internet Application)の現状について勉強させて頂きました。情報の密度も高く、高額な費用も十分納得できる素晴らしいものだったと思います。
で、その際に各種デモを見て、何となく思ったことを。
一般的なRIAは通常のアプリケーションソフトウェア(以下、アプリケーションと略)と異なり、達成すべきタスクが明確で限定されている(例:航空券を予約する)ことが多いかと思います。そのため、アプリケーション全体の情報を提供する、独立した外部情報(既存のchm形式のヘルプや独立した操作解説ページなど)は不要となり、操作情報は操作に応じた状況依存で提供することが基本方針になります。
ただし、それでは操作前/操作中に操作全体の流れを把握できなくなり、ユーザーの不安感につながる可能性があります。従って、必要に応じてその種の情報を参照できるようにするか、または全体の流れの情報をUI側で提供する必要が出てきます。外部情報を参照させずに操作に集中してもらいたいというRIAの狙いからすると、操作情報をUIへ統合するという後者の方法が望ましいでしょう。操作情報のUIへの統合というネタは以前から主張してきたのですが、ようやく一般化するところまで来た、という感じです。
しかしこのような外部情報を軽視すると、操作にあたっての前提理解や制約条件といった情報をどのように提供するか、という視点が抜け落ちてしまう可能性があります。この種の情報は操作する前に提供されるべきものですが、実際にUI上でこの種の情報を提供しようとしても、文字情報だけを並べても読んでもらえることは期待薄でしょう。かといって、理解してもらわないことには、操作の終盤段階で「それではタスク実行できません」というユーザー体験としては最低のケースにつながりかねません。
そのような事態を防ぐためにも、ユーザーシナリオや操作手順、情報伝達システムを入念に設計することが必要で、先日のセミナーでもこれらの設計プロセスの重要性が強調されていました。ですが、通常のアプリケーションでもこの辺の設計はヘロヘロなのに、RIAになった瞬間に問題が解消される、というのは幻想に過ぎないでしょう。結局のところ、WebサイトやアプリケーションのUI設計や情報設計に携わる方でも、操作情報のデザイン経験が乏しいということにも原因があるのではないでしょうか。その意味で、テクニカルコミュニケーション分野の人達の関与が、もっと必要ではないかと思います。
まあそんなこんなで、RIA上での操作情報の提供手法については、今後も見守っていきたいと考えています。