昨年から自分なりにいろいろ考えていたことがあるので、(車輪の再発明的な話ばかりで申し訳ありませんが)とりあえずまとめてみました。各種オフ会などで友人には話したことがあるのですが、そういうものは完成度度外視でとっとと公開しろ(Web 2.0精神...)と随分言われましたので。
まずWeb 2.0でデータ中心という話が出てくる前提ですが、
という流れがあったかと思います。もちろん知的財産の共有という大目的あればこそ、ですが。
ただ、大元のデータに関しては、やはりblogとか写真だけだといまいちつまらない(笑)訳です。商業ベースで制作・流通されているコンテンツ(映画とか音楽とかに限らず、広義のコンテンツ)を利用したいというのが、ユーザーの偽らない心境でしょう。
そうなると、
ということになります。Web 2.0のポイントはデータの利用価値にあるというのも、このコンテクストで考えるべきです。
ここで問題となるのは、「公開した方がメリットがある」という主張が妥当かどうかです。確かにamazon.comのように、最終的にコンテンツ(=データ)が物販の入り口に直結しているような場合は妥当でしょう。公開することによって自らのビジネスの機会が明示的に増大するからです。しかし地図コンテンツ(特に道路や建物がベクター化されているような手の込んだもの)が良い例ですが、コンテンツベンダ自身(地図データであれば地図作成会社)が無償で公開する動機付けに欠けるケースも多いのではないでしょうか。
ここで地図データを例にして考えてみましょう。この分野でのWeb 2.0的なサービスとしてはGoogleローカルがあり、Googleローカルはゼンリンにお金を払ってベクター形式の地図データの提供を受けているようです(衛星写真モードの話は置いときます)。この投資をどのように回収するかですが、ローカル検索上で地図とPOI(Point of Interest)を組み合わせて、地図コンテンツに投資した費用をGoogleがクライアントの広告費用という形で間接的に回収するという形になると思われます。
この場合、最終的なコンテンツ提供者(ゼンリン)のビジネスというよりはむしろ、それを組み合わせて売りにできるシステム提供者(Google)のビジネスになっているわけです。Web2.0絡みでよく言われているリミックスやマッシュアップというのはこういうことで、Web 2.0的なビジネスをしようと思うのであれば、「公開した方がメリットがある」というスキームをシステム提供者が設計できるかどうか(Web 2.0的なコンテンツ公開をコンテンツ提供者とユーザーに納得させられる絵を描けるかどうか)が一番重要なポイントになります。
逆に言えば、コンテンツ提供者側がこの絵を描けないようだと、たとえシステム提供者のサービスがコンテンツに依存するものであっても、サービスのイニシアチブを自ら取ることは永遠にできないということになってしまいます。地図データなしにサービスが成立しないにも関わらず、ビジネスの主体はGoogleになっているGoogleローカルの存在がその代表例です。コンテンツ生成にコストがかかる上に、公開という手段がビジネスに直結しにくいニュース記事や地図などのコンテンツの場合、この辺が悩みどころでしょう。個人的には、ビジネスになりにくい種類のコンテンツが軽視される世界は好ましくないと思っていますので、現場の方の発想に期待したいところです。
まあそんなこんなで、Web 2.0時代ではデータがモノを言うのは確かなんですが、そのデータでビジネスができるかどうかこそ問題だという点にももっと注目が集まって欲しいところです。また、単にデータでビジネスをするだけならGoogleやYahoo、MSN(Microsoft)などのすでに巨大なデータベースを持つシステム提供者の総取りビジネス、強者必勝の世界になってしまうでしょうから、その流れにアイディアでどう対抗していくのか?が今後の見所ではないかと考えています。