この1年での仕事の話です。メーカーのマニュアル担当の方と話をしていると、マニュアル制作者(制作会社)に対して不満を持たれている方が多いようです。そのなかでも「仕様書や支給資料の清書屋(DTP屋)以上の仕事をしていない」という不満が強いと感じます。さらに突っ込んで話を伺ったり、実際の完成マニュアルを拝見したりすると、以下の問題を抱えている傾向があるようです(以下、とりあえず自分のところを全部棚上げして話を進めます)。
要するに日本語表現としては正しくてもマニュアルとして全然ダメという訳で、これでは清書屋呼ばわれされても文句は言えないでしょう。何が良いマニュアルなのか?を理解していないためか、後継製品のマニュアルが元製品のものよりも劣化していることさえあります。制作会社(や担当者)によってレベルの差はあるにせよ、全体的にマニュアルの品質は低下傾向にあるように思われます(少なくとも明示的に向上しているようには思えません)。
確かに最近の製品やサービスは高機能化/複雑化が著しく、製品理解のハードルが上がっていることも事実です(これはまた別の機会に書きます)。しかし上記の問題はそれ以前の話で、「閲覧コンテクストを想定した上で、どのような情報をどのように提供すべきなのか?を正しく判断する」という、マニュアル制作のプロセスで一番重要なところができていないのですから、どうしようもありません。狭義のライティングテクニック(日本語表現)としては問題なくとも、マニュアルとして機能しないのであれば意味がないのです。
また、この品質低下問題については、既存の評価チェックリストによる品質評価が機能していないと捉えることも可能かと思います。多くの制作会社の社内チェックではこの種のチェックリストを使用しているようですが、それが品質向上につながらないのであれば、チェックリスト自体の妥当性が問題になってきます。マニュアルコンテストの審査基準に対する疑念は以前書いた通りですが、現実のマニュアル品質を評価する上での押さえておくべきポイントが、しっかり押さえられていないのではないでしょうか。
この種のチェックリストですが、文章やイラストといった最終表現のテクニック評価に偏りがちで、一番重要と思われるユーザーコンテクストとの適合性や情報構成方針などがケアされていないものが多い、という印象があります。要するに定量化やON/NGの判断がしにくい部分がスルーされている訳で、これが結局、所謂テクニカルコミュニケーションの付加価値を正当に主張できない(コストとして転嫁できない)という問題にも共通する、諸悪の根源ではないか?とも考えられます。
まあなんだかんだで、品質向上のためには教育体制を地道に何とかしていくしかないでしょう。優秀な人材を確保できないこともあるのかもしれませんが、マニュアル制作会社にもしっかりした教育をお願いしたいところです。この辺の教育のポイントについては、関係あるようなないような微妙な次回(予定)のエントリに続く、と思います。ちなみに弊社ではマニュアル評価や、社内勉強会のサポートなどといった品質向上支援も業務として行っておりますので、お困りの際はぜひ声をおかけください(笑)
そうそう最後にひとこと。笑って見てる(かもしれない)Web制作関係の方々、他人事ではありませんのでよろしくお願いしますね。