業務マニュアル制作に対応する、と言うけれど

2007年6月11日

テクニカルコミュニケーター協会の広報誌「TC協会ニュース」(第77号)(PDFファイル)で、「日本版SOX法の施行を睨み、業務マニュアル分野への対応拡大、支援を考えるべきでは」という趣旨の話が協会理事の方へのインタビュー記事にありました。このコーナーの以前の記事でも触れましたが、ようやくこういう話が出てきたか...という感じです。

でも正直なところ、現状のマニュアル制作者に要求されるスキルセットでは無理でしょう。というのは、業務マニュアル制作においてもっとも必要とされるであろうスキルが、現状のマニュアル制作では重視されていないからです(本当は必要不可欠のはずなんですが)。

業務マニュアルを制作する必要が出てくるケースとしては、以下の3つのケースが大部分ではないかと思います。

  • 業務マニュアルが存在しない状況で、業務の属人化を廃して正規化(マニュアル化)を行う場合
    業務全体の場合もあれば、特定領域についての業務マニュアルだけを新規追加する場合もあるでしょう。
  • 業務マニュアルが煩雑化・複雑化しているため、業務マニュアルを整理・改訂する場合
    業務領域の重複やマニュアルの都度改訂のために全体の構成が破綻していたり、業務の流れが見えなくなってしまっていることとか、よくありますよね。
  • 業務の刷新に伴って、業務マニュアルを見直す場合
    業務改善や新業務システムの導入とあわせて、業務プロセスを見直す(→業務マニュアル改訂)というケースです。

上記いずれの場合であっても、わかりやすいマニュアルとして情報をまとめる視点だけでなく、業務プロセスに問題(漏れや潜在リスクなど)がないかどうかをチェックするという視点が必要、ということに注意する必要があります。特に後者の視点が重要で、業務マニュアル作成という業務は、業務プロセスのコンサルティングの領域に一部踏み込む必要があるのです(ここでマニュアル制作者ならではの独自視点をどう活かすのか?が、コンサル屋さんとの差別化になるはずなのですが...)。

これは操作マニュアル制作において、仕様書を読解してユーザビリティの問題を指摘する(さらには改善案を提示する)ことと同義であり、現状のマニュアル制作者のスキルでは対応が難しいでしょう。主な活動領域である操作マニュアル制作においてさえできない(重要視されていない)ことを、業務マニュアル制作の領域でできるはずがありません。業務マニュアル制作に乗り出すためには、操作マニュアル制作に要求されるスキルセットから見直す必要が出てくるはずです。

当該記事中の会社は親会社がSIerということもあり、上流工程で業務が正規化された後で業務マニュアルの制作開始、というケースが多いのではないかと思われます。このようなケースでは、仕様書をベースに操作マニュアルを制作することとプロセスとしてはそれほど変わらないでしょうから、さほど大きな問題はなさそうです。ただ、それが本当に業務マニュアル制作という仕事なのか?というと、何かちょっと違うような気がするんですよね。

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