皆様もすでにいろいろお考えのこととは思いますが、今のうちにしっかり意思表明をしておかないと後悔することにもなりかねないので...。
8/30に迫った衆院選の論点はいろいろあるかと思うのですが、焦点は景気対策・社会保障政策あたりでしょうか。相も変わらずマスメディアはどうしようもない報道やら(自称)評論家・ジャーナリストのコメントを垂れ流しにしているようですので、この場で自分なりに論点を整理してみることにします。「景気対策について」「麻生政権を支持すべき理由」「民主党を支持すべきでない理由」という論点で何回かに分けてエントリを投入しますので、異なった意見を持つ方でも目を通していただければ幸いです。
ということで、まずは景気対策です。私は麻生内閣の政策は非常に迅速・適切であると評価しています(「対応が遅い」と批判するメディアもありましたが、対応が遅れたのは民主党が審議拒否・採決拒否で足を引っ張ったからであって...)。自民党と民主党の経済政策の違いを財源論だけに求める議論も散見されますが、これは適切ではありません。両者の違いについてわかりやすく整理されている三橋貴明氏のblog記事を3つ、連続で引用します。
なぜわたしが「フローとストック」にこだわっているかというと、この部分にこそ、民主党の景気対策の欠陥が露骨に出ているからです。改めて国家経済のフローとストックについてご説明しますが、要はGDP(フロー)と国家のバランスシート(ストック)のことです。添付の横棒グラフになっているのが、2008年の日本の名目GDPで、表の方が2008年末におけるバランスシートなわけですね。この二つは互いに影響を与え合い、国家経済を成長させていきます。
例えば、すでに実施された定額給付金は、ストック(バランスシート)上の政府の負債を増やし(=国債で資金調達し)、家計に2兆円分給付したわけです。給付されたお金を家計が消費に使うと、フロー(GDP)上の個人消費の部分を増やします。(ここから、乗数効果が始まります。)消費に使われなかった部分は、バランスシートの家計の資産の方に積み上がるわけです。(この辺、消費性向や貯蓄性向により、決まります)あるいは、予定されている公共投資拡大も、バランスシートの政府の負債を増やし(=国債で資金調達し)、GDPの公共投資の部分を増やすことで、フローの成長を狙っているわけです。(この場合も、やはり乗数効果が始まります。)自民党政権の景気対策は、基本的には「ストック⇒フロー」という流れになり、フロー(GDP)を高めることで国家経済を成長させることを意図しています。
それに対し民主党の方ですが、同党の景気対策は、基本的に「フロー⇒フロー」になっているところが特徴的です。
例えば、子ども手当ての場合、扶養控除などを廃止(=増税する)し、財源を確保した上で、給付されます。家計の扶養控除を廃止すると、可処分所得が減りますので、当然ながらフローの個人消費は減ることになります。あるいは、「公務員や公務員の人件費を削減して、景気対策!」も、フロー上の政府最終消費支出を減らし(公務員の人件費は、GDP上の政府最終消費支出項目)、別のフローを高めようというものです。
要するに、民主党の景気対策は、「ストック」の方をまるで無視しているところが特徴的なのですが、これは恐らく民主党が「日本政府は負債増加で財政破綻する!」なる、日本財政破綻原理主義の人たちと近い立場にあるためだと思うのです。国債金利が1.2%台という異常に低い数値で推移している以上、ストック上の政府の負債を増やし、フローを高めるのが景気対策の王道になります。にも関わらず民主党が「フロー⇒フロー」にこだわるのは、単純に「フローとストック」について理解していないのか、あるいは自民党と無理やりに差別化しようとして、泥沼に嵌まってしまったかのいずれかでしょう。
民主党の「フロー⇒フロー」の景気対策では、現在の日本にとってほとんど何の役にも立ちません。そもそもフローの成長率が高まらないことが問題になっているときに、景気対策を理由にフローを削りとろうとしているわけですから。
わざわざフォローする必要もないかと思いますが、念のため。「フローの成長率が高まらない」(またはフローがマイナス成長する)原因は需要不足なので...ということはつまり、デフレスパイラル再びということになります。
現在、09年当初予算に盛り込まれた公共事業7兆4千億円の内、4兆円以上の契約が終了しています。このまま予定通り事業が施行されれば、フローの拡大(乗数効果)が始まるわけですが、民主党は公共事業を大々的に削減するという姿勢を変えていません。
例えば5兆円の公共事業をストップすると、それはそのままGDPのマイナスになります。もちろん、フローの問題だけではなく、事業が中止された結果、雇用は確実に悪化します。要は、失業者が増えるわけです。さらに、その5兆円が「子ども手当て」に回されたとして、それが貯蓄に回ってしまうと、GDPは全く増えません。子ども手当ては減税などと同じ所得移転ですので、配られるだけではフローは拡大せず、あくまで「使われなければ」GDPは増えないのです。
鳩山は党首討論で、成長戦略について、「家計を中心に内需を拡大する」などと言っていました。百歩譲って、子ども手当ては「定額給付金」の一種と思えば、家計の消費拡大に貢献する可能性はないわけではありません。しかし、そのために公共事業などを中止し、雇用不安を煽り、経済の全体のパイ(GDP)を縮小させてしまった場合に、子ども手当てを受け取った人々は、本当に消費拡大に走るでしょうか。むしろ現実は逆でしょう。きちんとGDP全体が拡大していき、人々の雇用が維持され、かつ給与所得が上昇していって、はじめて個人消費の拡大は加速することになるのです。要するに民主党の「成長戦略」とやらは、根本からおかしいのです。
公共事業の是非を巡っては様々な意見がありますが、公共事業の大幅な削減が地方経済に壊滅的な打撃を与えた原因の1つであったことは事実と言わざるを得ません。格差の拡大を問題視する一方で公共事業の大幅削減を支持する方は多いようですが、ロジックの一貫性について自分で疑問を持つことはないのでしょうか?
さて、民主党の何が嫌かと言えば、↑このような数値データ(引用注:日本国2009年第2四半期(4月-6月期)実質GDP成長率構成)に基づいた「現状」を無視した対策を、「マジで」やろうとしているところです。補正予算を凍結するということは、エコカー減税、エコポイントを停止し、折角拡大しつつある個人消費に水を差します。何らかの代替案が用意されているというならともかく、そんなものは存在せず、あったとしても9月に予算編成して間に合うはずがありません。(予算組み替えの大混乱の中、年が終わるでしょう。)また、日本に「ジパング再来!」をもたらすであろう公共投資、第2四半期からきちんと成果が出ている公共投資を、この期に及んで中止するなど、はっきりいって正気の沙汰じゃありません。
ここは是非、麻生首相始め自民党の面々には、以下のロジックで民主党に問いただして頂きたいと思います。
「政府の政策効果で実質GDPが年率換算3.7%の成長になったが、ここで補正予算を凍結し、民主党は一体『何の支出項目』に成長要因を求めるのか。その際に、『幾ら』の予算を政府が投入するべきで、その予算は『どこから』持ってくるのか。もちろん民主党の主張している予算調達方式、すなわち公共投資削減や公務員の人件費削減が、実質GDPをマイナス成長させることは『子どもでも理解できる足し算引き算の世界』だが、民主党はそもそも『GDPとは何か』『景気対策とは何か』について理解しているのか」
はっきり言って、ことは自民党を支援する、しないの問題ではなく、「日本経済の成長を継続させるか」、それとも「マイナス成長に舞い戻らせるか」の選択なのです。
余計なお節介だとは思いますが、お子さんやお孫さんをお持ちの方で(雇用や経済情勢の安定に着目して)「子のために(孫のために)良い社会を...」ということを重視するのであれば、民主党に一票を投じるのは自殺行為です。どうしても心情的に自民党に票を入れたくない場合は、「確かな野党」共産党(笑)や国民新党、みんなの党、改革クラブといった他党に票を入れるのがよろしいかと思います。