1997年4月28日
前回はのOS用語につづいて、パソコン編の締めとさせていただく「ソフトウェア用語」です。今回はビデオ編集ソフトウェアという良い例が見つかったので、この分野の実例をもとに考察します。
最近はハードウェア性能の向上と相まって、パソコンレベルでもDTV(デスクトップビデオ←これも意味不明ですね)ができるようになってきました。つまり、ビデオ機器からパソコンに素材となるさまざまな場面の画像と音声を取り込んで、パソコン上で並び替えたり、場面転換の時に特殊効果をかけたりできるようになった訳です。
このような機能を持つビデオ編集用のソフトウェアとして、Adobe Systems社のPremireや、Ulead SYstems社のMedia Studio、NECソフトウェア長野社のFilM工房などがあります。
ビデオ編集には、ビデオ編集界独自の用語が数多く存在します。例えば、アッセンブル編集、インサート編集、ABロール編集、カット、ワイプ、ミックス(ディゾルブ)、クロマキー、トランジション、マスターなどの用語ですね。
通常のビデオ機器を使った編集用語に加えて、パソコンを使うノンリニア編集ではさらに難解な用語が多数出てきます。
なぜかといえば、取り込んだ複数の場面を並び替える操作ウィンドウや、それぞれの特有の操作にも、それなりの名称が必要となるからです。
ここで、上記のFilM工房とPremire、Media Studioが面白い対照をなしています。
PremireやMedia Studioがビデオトラック、プロジェクトウィンドウ、トランジションウィンドウといった業界用語を多用しているのに対して、FilM工房では映像トラック、素材選択ウィンドウ、効果選択ウィンドウといった素人でもわかる用語を採用する努力の跡が窺えるのです(それでもスケジュールウィンドウやプレビューウィンドウの様な用語も残ってはいますが)。
当研究所としては、先発ソフトウェアで採用された用語を安易に取り入れず、わかりやすい用語を採用したFilM工房に対して、拍手を送りたいと思います。FilM工房が国内制作のソフトウェアである(ローカライズ版ではない)という側面も多分にあるとは思うのですが。
ところで、「横文字用語を採用してはいけない」と一概に言えないことにも注意を払う必要があります。例えば、ビデオ編集に十分に慣れた人がFilM工房を使うと、今まで使っている用語とあまりに異なるために、かえって操作の習熟が遅くなってしまうことも考えられます。初めて趣味で使う人に対してはともかく、仕事で使っていた人に対しては、それまでの知識を活用できるような配慮が必要になります。対象とするユーザー層が明確な場合には、そのユーザー層に合わせた用語の選択も重要になるでしょう。これもラプラス取説研究所のローカライズ原則に付け加えておきます。
ここまで3回にわたってパソコン絡みの用語について考えてきました。純粋に用語のわかりやすさだけを考えられる状況であればよいのですが、現実問題として「すでに決まっている外来語をいかにわかりやすくローカライズするか」が重要な問題となっています。
国内勢の頑張りに期待するとともに、前回あげたラプラス取説研究所のローカライズ原則をもう1度あげて、このテーマを終了することとしましょう。
マニュアルや画面上の説明に使う用語の一般的な問題については、また機会があれば触れてみたいと思っています。