わかりにくい用語を探そう(ハードウェア編)

1997年3月25日

「マニュアルで使っている用語がさっぱりわからない」というユーザーからの声は最近大きくなるばかりです。また「機能名が全然わからない」という声も聞かれます。マニュアルで使う用語について、一度立ち止まって考えてみることが必要なのかもしれません。
でも、「企画が考えた名称だから」とか「米国の親会社が決めた機能だから」という理由で、マニュアル中でもその用語を使わなければならないことも数多くあります。用語について考える前に、現在出回っている、ユーザーに理解不能な困った用語について考えてみましょう。ぜひ改善していただきたいものです。

なお、以下に登場する機能名、用語については、各社の商標ならびに登録商標のものもあります。また、以下の文章は、その商標ならびに登録商標を保持する個人ならびに団体に対して、その名誉を毀損するためのものではありません。

まずは一般論

ひとくちに「用語」といっても、パソコンの場合は特にハードウェア用語OS用語ソフトウェア用語(機能名)をわけて考えなければなりません。
例えば「SCSIなんて初心者にはわからないから別の用語にしろ」という暴論も散見しますが、これでは今まで「SCSI」がわかっていた人も、何が何だかわからなくなってしまいます。パーツ屋さんにSCSIのハードディスクドライブを買いに行っても、うまく言えなくてIDEドライブを買ってしまうかもしれません。用語を変えたり、なくしたりすればよいという問題ではありません。

同様に「クリックという言葉を使うな」という意見も根強いものがあります。そうは言っても、クリックがなければダブルクリックもないわけで、どう考えても「マウスのボタンを2回押す」ことと「ダブルクリック」は操作として異なります。クリックという用語を使わないことで、分かりやすさが向上すると言うのは安易な思い込みに過ぎないと思います。「クリック」ではなく「押す」という操作がベースになるように、OSレベルの操作仕様が変わるというのであれば、話は別ですが。

ソフトウェア周りの用語については、マニュアルではソフトウェアの仕様に従うしかないですよね。「〜が表示されます」といって、画面と用語が違うものを使うわけにはいきません。
これはソフトウェア上で使用する用語を決める時点で、わかりやすい用語を使うようにしなければ、「マニュアルの用語がわかりにくい」と言われても、どうしようもありません。

以上のような現実問題を明確に認識したうえで、それぞれの要素について考えていきましょう。

ハードウェア用語

まず、ハードウェアウェア用語ですが、これは理解しろと言っても無理ですよね。ちょっと考えただけでも、CPU、メモリ、ハードディスク、フロッピーディスク、SCSI、IDE、ATAPI、USB、IEEE1394(FireWire)、その他いろいろな用語が次から次へと登場してきます。
マニュアル側で対処するには、ルビをふる簡単な用語解説をつけるというくらいしか、対処のしようがありません。あとは、そのような用語に依存した文章を避けるよう心掛けるしかないですね。接続図ではコネクターのアイコンしか描かないとか. . . 。「用語を何とかする!!」と力んで始めたわりには、すでに失速寸前ですね(笑)。

これからはハードウェアメーカーが規格を策定する段階で、わかりやすい名称をつけてもらうしかないと思います。文字+数字よりは文字の方が良いでしょう(例:IEEE1394よりはFireWireの方が覚えやすいですよね)。パソコンのハードウェア関係の規格は米国メーカーに決められてしまうことが多いうえに、IEEEとかISOなど標準化団体が介在することも多いので、わかりやすい用語を求めてもそうは行かないという現実も理解できます。
せめて日本のメーカーレベルで、ハードウェア用語の統一したローカライズを進めて欲しいような気がします。
ハードウェア用語全体の風通しを良くして、初心者もヘビーユーザーも同じ言葉で話せるようにしたいものです。わざと難しい用語を使う輩は軽蔑されるくらいになるとすばらしいですね。

今回は、機能名というよりも用語に絞って話を進めてきました。この話は長くなるので、次回とその次の3回に分けてお送りしたいと思います。次回はOS用語、その次はソフトウェア用語がターゲットになります。

このあたりのテーマであれば、ローカライズ自体の問題や、1メーカーの裁量でわかりやすくすることのできる分野の話ができるので、より建設的な話なると思います。

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