紙媒体の検索性を改善する(視覚編)

1998年3月16日

今回は、マニュアルの検索性について、視覚的な表現の面から考えてみようと思います。

紙マニュアルでのビジュアル表現

「紙マニュアルで検索性を向上させるためのビジュアル処理ってあったっけ?」と思われる方もいるかと思いますが、意識していないだけで、思い出してみると実はいろいろあります。
とは言っても、マニュアルのためだけに発生した処理はありません。現在にいたるまでの、印刷文化の発展の過程で発生してきたさまざまな処理を、マニュアルが勝手に借用しているに過ぎません。
まあそれはともかくとして、実例を見てみましょう。

わかりやすく説明するためのビジュアル処理と境界があいまいな面もあるのですが、以下のようなものがあげられるでしょう。

こういった処理によって、ユーザーに「自分はどこにいるのか(どこを見ているのか)」ということを明確に伝達できます。厚さを持つ紙メディアならではの特徴と相まって「このくらいの厚さなら、あとこれくらいかな」という印象をユーザーに与えることもできます。
また、ノンブルや小口インデックスによって、ぱらぱらめくっているときの検索性も確保できます。

紙マニュアルなので、上にあげたような処理はぱらぱらとめくりながら見るときに効果を発揮する種類であると言えるでしょう。
紙メディアという、取扱情報を展開するメディアの特性を生かした処理であると言えるのではないでしょうか。

電子マニュアルでのビジュアル表現

では、電子マニュアルで検索性を確保するためのビジュアル表現ということになると、どうでしょうか? いきなり出てくると難しいかもしれませんが、電子メディアの特性を検討すれば、おおかたの予想はつきそうなものです。
電子マニュアルの、電子メディアとしての最大の長所はハイパーリンクであり、最大の短所は一覧性に劣る(ぱらぱら見られない)ことです。
すこし考えれば、この長所と短所は表裏一体であることがわかります。

では、こういった特性を考慮に入れて、電子マニュアルに適した検索性を与えるためのビジュアル表現には、どのようなものがあるのでしょうか?
基本的には紙メディアの表現手法が利用できると思われます。しかし、ノンブルのように電子マニュアルでの利用価値については「?」なものもあります。小口インデックスも紙メディアでこそ本来の効果を発揮するものと考えたほうが良いでしょう。

現実的には電子マニュアル自体が未成熟なせいもあり、これこそ標準というビジュアル処理はまだ確立されていないように思えます。
しかし、電子メディアでも比較的標準的な見せかたが確立してきた分野があります。
そう、Webページデザインです。

まだまだ新しい、革新的なビジュアル処理が出てくることも予想されますが、現時点で標準的な例を2つあげてみましょう。

  • ナビゲーションバーの使用
    主な見出しを上や左側に固めることによって、全体の見通しをユーザーに与える効果があります。電子マニュアルは手にとってみることができないので、全体が見通せることは、意外と重要です。
    現在表示されているページを何らかのしかた(例:ハイライト表示)で区別させたり、現在の見出しに含まれる残り分量を明確に伝えたりすることができれば、より効果的な手法といえるでしょう。
    見出しを一覧させる以上に階層をより明確に示すための方法として、ツリー(樹状)表示という方法もあります(Windowsのエクスプローラが良い例ですね)。
  • サムネイルの使用
    一部のPDF書類で使用されている、ページの縮小表示をナビゲーションに使用する機能です。人間は「こんな感じのページだった」と漠然としたレイアウトの印象で検索をすることがありますが、電子マニュアルでそのような検索をしたいときには、これしかありません。ぱらぱらめくることができない電子メディアでも、漠然とした印象をもとに検索できる手段を用意することができる、という良い例ですね。
    ただし、あまり込み入ったレイアウトをしているときや、どのページも全く同じレイアウトをしているときは、あまり効果的ではないかもしれません(全部同じに見えてしまうためです)。

他にも注意してネットサーフィンをすることで、新たな可能性を持つビジュアル処理=インターフェースを発見することができるかもしれません。

紙マニュアルにしろ、電子マニュアルにしろ、やはり検索にあたってのメディアの特性を考慮した、ビジュアル処理が重要ということですね。
紙メディアではそれほど新たな展開は予想できない分、電子マニュアルのビジュアル処理に期待して見守っていきたいところです。
当研究所でもユーザーの検索性をサポートするデザインについて、今後検討を進めていきたいと考えています。

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