読書の時間(1)
Webデザイン・ビジネス
まずは、クレメンス・モック著「Webデザイン・ビジネス−時代がわかるデジタル情報の再構築ノウハウ」です。
「なーんだ、最近あふれているのWebマスター用の解説本か」と思ってはいけません。この本の主題はいかにビジュアルデザインに凝るかではなく、いかに情報をゲストに提供するかにあるのです。マーケティング的な視点で、情報をどうデザインするかに興味のあるかたには必読の書といえるでしょう。マニュアルに関心のあるかたにも、自信を持ってお勧めできます。
5800円と高価なのが難点ですが、読んでみて自分の考えをまとめるためのテキストとして考えるのであれば、元はとれるのではないかと思います。(ISBN4-8443-5452-3、この本の詳細についてはこちらをご覧ください。)
インフォメーション・デザインやインフォメーション・アーキテクチャーという分野についても触れられています。この本を読めば、当研究所が目指すインフォメーション・アーキテクトの概念もおわかりいただけるかと思います(笑)。 (1998.04.24)
失敗の本質
今日は組織論についてのおすすめ本、戸部良一他5名による「失敗の本質 − 日本軍の組織論的研究」です。
第2次世界対戦当時の最も洗練されていた官僚組織である日本軍の、組織としての意志決定システムおよび意志決定プロセスを分析することで、今日まで残されているであろう日本的組織の持つ問題点を浮き彫りにすることが本書のテーマです。
本書では、失敗した作戦にこそ組織の問題があらわれるという確信の元に、前半ではミッドウェー海戦やガダルカナル島戦など、個別作戦での意志決定に焦点を当てて分析しています。
後半では、意志決定システムや人事評価プロセス、組織的なノウハウの共有、リソースの蓄積といった具体的な例を米軍との対比を通して分析することで、日本軍の組織的特性を浮き彫りにします。そして明らかになるのは、日本軍は自己革新に失敗した組織であるということです。
本書の結論としては「組織がオープンシステムであること(組織自体の自己革新性がどう確保されているか)こそ、真の創造的組織たりうるかの指標である」というところでしょうか。
現在のような既存の常識が大きな意味を持たない状況において、未知の状況に的確に対処できるような組織をいかに作り上げるか、というテーマに関しては、本書の分析が参考になるのではないでしょうか。
組織内でマネジメントする立場にいるかただけでなく、日本の組織というものについて関心のあるすべてのかたにおすすめできる本です。(中公文庫、ISBN4-12-201833-1) (1998.04.27)
情報デザインのためのインフォメーショングラフィックス
読書週間ということで、当研究所ならではのおすすめ本を紹介したいと思います。
エリック・K・メイヤー著「情報デザインのためのインフォメーショングラフィックス」です。
コミュニケーション手段としてのビジュアルはどうデザインされるべきかという視点で、新聞や雑誌に使われるようなビジュアル処理のあるべき姿、テクニック、様々なフォーム(見せかた)についての長所や短所、を解説しています。
この説明でおわかりの通り、実際には直接マニュアルのビジュアル化に結びつくような内容の記事は少ないです。しかし、読者の志向に合わせて構成や見せかたを工夫するためのアイディアや考えかたは、マニュアル制作者にとっても十分に参考になるといえるでしょう。(ISBN4-8443-5472-8、この本の詳細についてはこちらをご覧ください。) (1998.10.28)
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