マニュアルのコストダウンを考える

2000年4月24日(第2版)

以前のバージョンではいろいろなコスト絡みの話が混ざってしまっていたので、メーカー側(発注者側)から見たマニュアルのコストダウンについて検討したいと思います。以前のバージョンをご覧になりたい方は、こちらです。

コストダウンは必要不可欠

今さら言うまでもありませんが、メーカー/ユーザー双方の利益のためにも商品を構成する部品のコストダウンは常に必要です。もっとも、それはあくまでコストダウンが適正な範囲に収まるという条件付きであることは言うまでもなく、コストダウンそれ自体が自己目的化してしまうとろくなことがありません。「コスト削減で値段は下がったけれども、安かろう悪かろうではね」ということになってしまうと、ユーザーの足も遠のいてしまいます。

では、マニュアルのコストを削減するには、どのような方法があるのでしょうか? おそらく、次の2通りの方法を併用することになるのでしょう。

それぞれの方法を採用するときに、具体的にどうコストを減らしていくのかを見てみましょう。

部品代を圧縮する

部品代を下げるためには、主にマニュアルの印刷にかかる費用を削り込むことになります。印刷工程は製品の製造ラインと同様に設備集約型の工程ですので、コストダウンのために用いられる手法は、物理的な方策を中心としたシンプルな物になります。

制作費を圧縮する

マニュアルの制作費を切りつめることで、製品開発費用を下げるというのも効果的なコストダウン手法です。制作工程は人材集約型の工程のため、単純な自動化や量産メリットによるコストダウンが効きにくいことに注意が必要です。

受注側も納得できるコストダウンとは

ここまで見てきたように、マニュアルのコストダウンを図るにはいろいろな手法があります。ただし「メーカーのコストダウン=制作会社/印刷会社の売り上げ減」ということを忘れて闇雲に自社本位のコストダウンを図ると、誰にも相手にされなくなってしまうことは言うまでもありませんし、制作会社/印刷会社の従業員もメーカーのお客様であることを忘れてはなりません。

しかし、お互いに甘えのある関係では効果的なコストダウンなど期待できないこともまた事実です。それでは、受注する制作会社/印刷会社側が許容できるコストダウンとは、一体どのようなものなのでしょうか?

ありきたりではありますが、やはり「コストや負荷を受注側で削減できる余地を残した上で、メーカー側がコストダウンを要求する」ということに尽きるのではないかと思います。

受注側が工夫することで吸収できるような要求であれば、メーカー側はどんどん要求しても良いでしょうし、受注側もそれに応えるべきでしょう。単価を切り下げられたとしても、その分工夫して仕事の負荷を軽くできるのであれば、極端な問題は生じないということです。まあこうした適切な要求を出すためにはメーカー側も勉強が必要ですし、制作会社/印刷会社の正当な要求は聞き入れる度量が必要になりますが(苦笑)。

しかし反対に、メーカー側で詳細な決めごとを強要して工夫の余地を奪ったりしているような場合や、有能な人材を長期にわたって一つの案件に縛り付けることを強いているような場合には、コストダウンを要求するまえに発注者であるメーカー側の意識改善、工程管理改善がまず必要になります。受注側で工夫の余地がなく負荷の削減ができない状態で、単価だけを下げられてはたまったものではありません(改めてメーカー側に警告しておきますが、マニュアル業界は労働力の流動性が元々高いこともあり、有能な人材は簡単に逃げてしまいます。制作会社/印刷会社を変えても長くは続きませんので、よく考えることです)。

印刷会社のマスプロダクション工程を別にすると、結局のところマニュアルのコストダウンのポイントは、作業工数をいかに削減するかに尽きるのです。「どうやれば自分だけでなく相手も楽ができるのか?」を考えるようにすれば、おのずと答えが見えてくるのではないでしょうか。

いかがでしたか?

コストの話は発注側と受注側を分けて考えないと、「適切なコストは必要」という単なる精神論になってしまうので、発注するメーカー側の観点を中心にして、内容をまとめ直してみました。

制作会社の立場から見ると、近年の複雑な製品のマニュアルを制作するためには、コストがかさんでも有能な人材を確保する必要があります。しかしその一方でメーカーからはコストダウンの要求が来るわけで、板挟みの状態が続くわけです。もちろんメーカーが制作会社の言い分をすべて聞く必要はないのですが、最終的にユーザーに安くて良い製品を提供するためにも、メーカー側がマニュアルにかかるコストの構造をもっと理解する必要があるのではないかと考えています。

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