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情報大工のひとりごと

裁量労働制とプロフェッショナル

今回はマニュアルと全然関係がありませんが、裁量労働制についてちょっと考えてみたいと思います。
現在、裁量労働制が一部で話題になっています。裁量労働とは、大まかにいえば「今までのように労働時間に対して給与を支払うのではなく、労働結果に対して給与を支給する」という制度です。
いままで一部の専門職だけが対象だったのですが、この対象職種を広げようという動きが最近出てきています。裁量労働制自体を問題視する人も多く、いろいろと話題になっているようです。




何が問題なのか?____見出し罫線____

  • 経営者側:「時間に対してではなく、結果に対して給与を支払うことで、労働コストの高さを改善する。労働者側にとっても拘束時間が減少するメリットがあるはずだ。」
  • 労働者側:「どんなに残業してもあらかじめ設定された給与額に変更がなく、事実上の労働強化である。それに結果評価が公正明確に行われるとは限らない。」
  • 経営者側:「給与は平均残業時間分を組み込んでいるし、そもそも業務目標は当人と上司が話し合いの上決めるものだ。」
  • 労働者側:「立場的に弱い労働者が上司と話し合って、本当に適切な業務目標を立てられるとは限らない。」

議論がかみ合ってないですね . . . 。
実際問題として、職場での結果評価の基準が明確で公正であることが保証されないかぎり、裁量労働制が経営者に悪用されかねない恐れは多分にあります。
皆さんもご自分の環境を振り返ってみておわかりの通り、評価が公正明確に行われている職場は現実的には少ないです。
そのため、裁量労働制の拡大という動きに不安を感じ、改正に反対する声が大きいという現在の状況は十分理解できるものです。

メディアでの報道によると、賛成の声は経営者側からしかあがっていないようにすら感じます。




デメリットばかりなのか?____見出し罫線____

では、裁量労働によってメリットを受ける労働者はいないのでしょうか? 仕事のできる労働者はどうでしょう? そのような労働者も裁量労働制の導入に反対しているのでしょうか?
実は、そのような労働者は同僚に慮って賛成の声を上げないだけではないのでしょうか?
朝日新聞には、そんなスーパーマンはさっさと会社をやめて独立しているよ...という文章がありましたが、意外と真実をついているような気もします。

日本の会社は組織として「内の調和」を重く見すぎる傾向があるようです。
労働条件は横並び。昇給や昇進は誰もが納得できて、自分も確実に恩恵にあずかることのできる年功序列。悪平等といっても過言ではありません。どちらかというと機会の平等ではなく結果の平等が重視されるので、仕事のできる人はモチベーションを保つのに苦労します。
この染み付いた悪平等は、企業の様々な面に悪影響を及ぼしています。
外部の協力会社に発注をかけるときも、既存のしがらみにとらわれて、本当に実力のあるところに発注がかかるわけではありません(マニュアルの品質が悪いのも、こういう面もあるような気がします)。

結果的にどうなるかというと、社員がとばっちりを受けて、本来やらなくて済むはずの業務が増えるわけです。口では生産性の向上を言っていても、実際の業務がこれではどうしようもありません。




これからの労働者の心構え____見出し罫線____

実際問題、この国際競争社会では、もうこのままではやっていけないことに誰もが気付いています。
社内的にも社外的にも、もう横並びはやめて、実力本位にしなければならない。でも自分は自信がないので、自分のところはいやだ。
そんなふうに思っている人が多いのではないでしょうか?

もし裁量労働制が広く導入されるようになれば、個々人が職種のプロフェッショナルになり、自分の労働力を会社に高く売りつけるくらいでなくては、やってはいけなくなるでしょう。できる人のする仕事と、できない人のする仕事ははっきりと異なってきます。
無理にできない仕事を社内に抱えることもなくなり、優秀な外部機関を有効に活用する、アウトソーシングがより重視されてきて、結果的に生産性は向上します。
総合的に見ればコストダウンになるため、経済も回復するかもしれません。
できる人は好条件を求めて職を選ぶため、労働力の流動性は高まり、結果的に終身雇用はあまり重視されなくなります。
そのかわり、一生懸命やってもできない人、働く機会を奪われている人が出てきます。しかし、このようなときにこそ公的保護の出番です。

こういう社会になると、いかに自分が特定の分野で抜きんでることができるかということが重要になってきます。
それによって、点数を取ればよいという、既存の評価軸の一つしかない教育制度も見直されるはずです。別にお勉強ができる必要はないのです。何か一つ、自分の得意なことを見つけられればよいのですから。
その得意分野を求めている人が、世の中にはきっといるはずです。




今回はすこし新保守主義的な視点で進めてみました。「失業が増える」という反対意見が多いことも充分承知しておりますが、企業内失業者の数から言っても、とても現在の状況が正常とは思えません。

学校に通っているわけではないのだから、出社して仕事をしていれば終身安泰なんて、いつまでも甘いことを言っているようでは、どうしようもありません。
「労働者はすべからくプロフェッショナルたれ」「自分の専門でメシを食え」ということが、もっと重視される社会になって欲しいものです。



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