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情報大工のひとりごと

攻略本とマニュアル(予備考察)



メーカー提供のマニュアルと一般の解説本____見出し罫線____

メーカー提供のマニュアルと一般の解説本について思うところを簡単にまとめたいと思います(そのうち増補版を研究発表として発表することになるかと思います)。

「できる」シリーズをはじめとした解説本の大ブームがメーカー提供のマニュアルの貧弱さを物語る良い例である、いうことに一般では認知されてしまったようですが、これには誤解があると思います。
というのは、両者には情報を提供するスタンスには大きな相違があるからです。
その製品の機能を過不足なく説明し、ユーザーに製品を使いこなしてもらうことで満足してもらう、というのがメーカーが提供するマニュアルの基本的なスタンスだと思います。この中には、マニュアルの過剰品質を避けることで得たコストダウン分を商品価格の低下という形でユーザーに還元することも含まれます。
それに対して一般の解説本では、過不足なくということよりも、ユーザーが要求する「具体的なあの操作」の説明を詳細に行います。別に製品自体を全て説明しなければならない必要は全くないため、必要な情報だけを押し込むことができ、コスト的にもオトク感があります。
本来メーカー側が解説本のスタンスも同時にとれれば言うことはないのですが、現実的には難しいように思えます。では一体、なぜでしょうか?

一番大きな理由は、ユーザーが求めているのは(Microsoft Excelで作成した表組をMicrosoft Wordに貼り込んだり、Adobe Photoshopで立体的なボタンアイコンを作成したりといった)いくつかの機能を組み合わせた手順の説明である、ということが大きいと思います。
いくつかの機能を組み合わせた手順を説明することはできるのですが、その場合手順数が10を超えることもしばしばあるでしょう(一般的には、ユーザーに提示する手順数は5〜9が適正水準ということになっています)。かつメーカーが提供するという品質を保ったままでは、ページがいくらあっても足りません。そもそも過不足なく説明しただけで400ページをこえるマニュアルもあるのですから、あとはおして知るべしです。
メーカー側もチュートリアルマニュアルなどを用意して、機能面からではなくユーザーの要求を前面に出した代表的な操作を説明することで、こういった要望に応えようとしているところもあります。しかし、すべての要求に応えようとすることは現実的には無理がある、ということは今までの話からご理解いただけるのではないかと思います。

この隙間を効率良くついたのが、一般の解説本の類だと思います。
ところで、本当に解説本の説明で操作できるかどうか、といった品質の面についてはあまり問題になっていないように思われます。なぜ問題にならないかと言えば、それはメーカーが提供するものではないからです。もしメーカーが既存の解説本のようなものを商品マニュアルとして投入したら、それはそれでクレームが殺到することは請け合いです。
確かに一般のユーザーにとっては、自分のしたい「あの操作」が具体的に説明されている、というだけで安心感があることは事実なのですが....。

結果としてこの問題は、全体のカバーと個々の目的のフォローの理想的な関係はどうあるべきか、つまり個と全体というありふれた問題に還元されていくような気もします。
難しい問題ですが、誰もが満足を得られるマニュアルについて、当研究所としても研究を進めていきたいと考えています。 (1998.06.01)



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