読書の時間(2)
認知的インターフェース
前回に引き続き、当研究所ならではのおすすめ本を紹介したいと思います。
海保博之、原田悦子、黒須正明著「認知的インターフェース」です。
インターフェースについて考察するために必要な要素が、40のキーワードごとにまとめられています。インターフェース問題の全体を把握したいかただけでなく、手軽に読める認知科学の入門書を探しているかたにもおすすめです。1991年発行なので、すこし古さを感じさせる記述が散見されることだけが残念です。
マニュアルやインターフェースの設計は、既存のノウハウをもとにした小手先の技術論で済まされてしまうことが多いと思われます。確かに現場のノウハウはそれなりに重要なものですが、学問的な研究も参考にして自分達のノウハウを常に相対化するくらいのつもりで日々の業務に取り組まないと、凝り固まった発想しか出てこなくなってしまうでしょう(自戒も込めて)。(ISBN4-7885-0386-7、1600円、新曜社) (1998.11.02)
広告表現を科学する
さて、本日ご紹介するのは、山田理英 著「広告表現を科学する」です。
「より効果的に広告を表現するにはどうすればよいか」という命題に対して、ノウハウといった伝統的なアプローチだけでなく、心理学/認知科学的なアプローチで研究した成果がまとめられています。人間の目を引くレイアウトやキャッチコピーといった実践的な内容を例として取り上げ、豊富な参考学説による仮定と実際のアンケート結果による検証というプロセスを通して、それぞれの要素を分析/解釈していきます。論理展開と結論には強引な点が散見されますが、議論の過程には注目すべき点が数多く含まれていると思います。
最近マニュアルと攻略本を比較して感じるのは、マニュアル業界には「見せる、目を引く」といった広告業界的なノウハウが不足していることです。
確かにこの本の内容は、日常業務に即戦力で生かせるものではないかもしれません。しかし、より効果的な表現を目指したいのであるならば、一度は熟読しておかなければならない本であると思います。(ISBN4-532-64036-9、日経広告研究所発行、日本経済新聞社発売、4000円+消費税) (1999.02.01)
HTML Help
期間限定の超多忙状態ですので、当研究所ならではのおすすめ本を紹介したいと思います(券売機の話は量的に大きくなりそうなので、次回の研究発表という形でまとめることになるかもしれません)。
今回ご紹介するのは、Windows 98の標準ヘルプであるHTML HelpについてKeiYu HelpLabで精力的に解説されている、石田優子さんのHTML Helpです。
Windows95の標準ヘルプ(いわゆるWinHELP)の解説書は、翻訳がひどいのか原典が元から腐っているのかわかりませんが、とにかくできの悪いものでした。HTML Helpに関しても、またあのようなMicrosoft社の公式マニュアルしか発行されなかったらどうしようかと当研究所でも頭を悩ませていましたが、石田さんが著者ということで一安心です。センスある著者選定を行ったアスキー出版局には、敬意を表したいところです。
付属CD-ROMにはMicrosoft社製のHTML Helpオーサリング環境も収録されています(発行日段階の最新版です)。HTML Helpについて詳しく知りたい方や、試しに制作してみたい方におすすめできる書籍ではないかと思います。書籍の内容について詳しくは、こちらをご覧ください(目次はこちら)。(ISBN4-7561-3060-7、3400円+消費税、アスキー出版局) (1999.05.27)
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