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情報大工のひとりごと

電子マニュアルをめぐるお話(2)



「携帯電話の電子マニュアル」は可能なのか?____見出し罫線____

先日、読者の方から表題のような疑問を頂きました。
昨年の紙の消費量が増えて理由として情報機器、そのなかでも特に携帯電話のマニュアル類の増加が理由としてあげられるような状況ですので、この分野のマニュアルを電子化できるとかなりの省資源が実現できます。もちろん安全規格上の問題などがありましから完全に紙マニュアルをなくすことは難しいでしょうが、大部分を占める煩雑な操作部分については、トライしてみる価値はありそうです。マニュアルに使用する紙だけでなく、梱包の軽量化による流通コストなどの削減も見込まれますので、実現できれば大きなインパクトを与えることができるでしょう。

ですが、携帯電話のマニュアルを電子化するには、以下の4つの問題をクリアしなければなりません。

  1. 表示デバイスの制限
    あの小さい表示デバイスで、すべてのユーザーが読みやすいと感じる操作情報を提供できるのかどうかが第一の壁です。携帯電話を使うのは若者だけではないですからねえ。

  2. 操作しながら読めない
    まず電子マニュアルを読んでから、記憶を頼りに操作させるのではなく、ウィザードやガイダンス形式でユーザーが操作しながら目的を達成できるような仕組みが必要です。携帯電話で電子マニュアルといってすぐに思いつくような、操作情報を記述した静的な文書を表示するだけでは、お話しになりません。

  3. マニュアルの保存場所をどこに確保するか
    本命はネット上に置くことなのですが、現状のパケット単位での課金システムが大問題です。本来メーカー(ないしは通信事業者)が製品と同時に提供する義務のあるマニュアルを参照するたびに、ユーザーが通信費用を負担しなければならないことは絶対に認められません。かといって本体内に置くにしても、フラッシュメモリの容量やら検証工数の兼ね合やらで、エンジニアからいやがられることは間違いありません。

  4. キャリアの体質
    これらの比較的技術よりの問題もさることながら、横並びで新しいことに手をつけたがらないキャリアの体質も問題です。「お役人体質の極み」とか「携帯電話のマニュアルだけは手がけてはいけない」とか陰口をたたかれている現状がすべてを物語ってますね(汗)。キャリアに対して電子マニュアルの利点を明確に訴求して受け入れてもらうためには、上記の問題、特に2と3の問題に対する解決策の提示が求められるでしょう。

この辺の問題は実は携帯電話に限ったことではなく、家電製品一般の電子マニュアル(電子的な情報提供)も同じような問題を抱えているといえますね。脱紙マニュアル、マニュアルのいらない製品がどこまで実現可能なのか、注目して行きたいものです。いえ、他人事ではなくこうした仕事に関われるように、当研究所も努力と実績を積み重ねていきたいと考えています。 (2001.04.04)




HTML形式の電子マニュアルに足りないもの____見出し罫線____

ときどき当研究所にも「PDFで電子マニュアルを作成しようと思うのですが〜」というようなご相談が舞い込むときがありますが、PDFは電子マニュアルのプラットフォームからついに脱落した感があります。紙媒体用のDTPデータが先行して存在しているならともかく、電子マニュアルのためだけにゼロからPDF用のデータを作成するというのは、そろそろ現実的ではないような気がします。配布ファイルにロックをかけるなどのセキュリティ管理や、PDFファイル1つだけで完結するという配布上のメリットを捨てがたいことは確かなのですが、最近の技術動向からするとプラットフォーム非依存の電子マニュアルはHTMLベースで供給されるべきでしょう。ユビキタスネットワーキングが実現するかどうかはともかくとして、ネットワーク展開に対する適応性でも期待できます。

ただ、相変わらずネックになっているのが検索システムです。電子マニュアルをネットワーク展開している場合は、各種リソースをサーバで管理しているのでいろいろな検索システムと連携させることも容易なのですが、通常の(ハードディスクなどの)ローカルに展開する場合はそうは行きません。結局のところ、検索システムに相当する部分がプラットフォーム側に用意されていないと、電子マニュアルに求められる、まともな全文検索の手段が存在しないのです。OS側の検索システムと組み合わせるようなことも考えられますが、電子マニュアルに最適化された文書インデックスの完全自動作成が行われる訳ではないので、なかなかうまくはいかないように思えます(それにローカルに存在する文書ファイルのインデックスファイル作成にはかなりの時間がかかるのも事実で、ユーザーが作成プロセスをキャンセルするケースも多いと思われます)。

このような問題に対して、HTML形式の電子マニュアルで標準的に利用できるインデックスデータ形式を策定して、そのファイルを電子マニュアルの文書ファイルと共に提供するというアプローチを取ることはできないでしょうか。データ形式が共通でオープンなものであれば、あとはそれぞれの閲覧プラットフォームで検索用のアプリケーションを開発することも可能になります。なによりも、プラットフォーム非依存という特性を維持したままで、HTML形式の電子マニュアルの泣き所だった全文検索性を向上させることができるということは、HTMLを利用した本格的な電子マニュアルへの道を開くことにつながります。

ただし、電子マニュアルの使い勝手自体もプラットフォームのユーザー・エクスペリエンスを差別化する要因の一つですので、プラットフォームベンダーには期待できなさそうな気もします。さまざまな思惑が蠢く領域でもありますし、なかなかそううまくは行きそうにありませんね。ではありますが、全文検索性に優れたマニュアルや技術文書、論文などの大規模文書を広く配布したい一般ユーザーにとって、このようなシステムはそれなりに魅力がありそうに思えますが、いかがでしょうか。 (2002.05.01)



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