トップページに戻る  
はじめにお読みください  
新着情報  
研究発表  
情報大工のひとりごと  
業務案内  
ご意見箱  
リンク集  
情報大工のひとりごと

インターフェース設計あれこれ(3)



少しだけPowered by MacOSX____見出し罫線____

先週末に発売されたMacOSX(正式にはMacOS X 10.0)ですが、さっそく予備マシンに導入してみました。初物だけにいろいろと不具合はありますが、Quartzと呼ばれるPDFベースの描画システムは期待にたがわぬ出来具合いで、かなり効果的です。こうした技術が一般化するのであれば、ディスプレイで文字を読むことに対する抵抗感も、かなり緩和されてくるのではないでしょうか。

さて、MacOSXの売り文句の一つである画面下部に表示されるDOCKシステムですが、これはいけません
何故かというと、ランチャーとタスクスイッチャーの二つの機能を同時にまかなおうとしたために、かえって中途半端な部分だけが目立ってしまっているからです。Windowsをお使いの方にDOCKシステムを説明するならば、タスクバーとスタートメニューを1つのコントロールで何とかしようとしたものと言えば、理解しやすいかもしれません。
ランチャーであればユーザーがカスタマイズしたもの以外は表示すべきではないですし、タスクスイッチャーとしてはその時点でアクティブなプロセス以外は表示すべきではありません。しかし、現状のDOCKはそのどちらもが逆になっています。UIとして分かりやすさと利便性を追求するのであるならば、今夏のメジャーリリースまでにより一層のブラッシュアップが必要でしょう。 (2001.03.27)




操作の柔軟性って何だろう?____見出し罫線____

操作の柔軟性を確保するためと称して、ユーザーにある操作目的を達成してもらうために、複数の操作方法を提供するという操作仕様設計が行われることがよくあります。ですが、本当にこの手法は使い勝手の改善につながっているのでしょうか? 複数の操作方法が並立することで、操作手段を選べるというメリットよりも、煩雑さというデメリットが先に出てしまうことはないのでしょうか?

エンジニアの方と話をしても、どうもこの点に対してあまり注意を払っていないことが多いようです。「だってたくさんの方法があった方が便利でしょ?」という一見それっぽい回答が帰ってくることが多いのですが、だまされてはなりません。ユーザビリティの観点でいうならば、使いやすい(Usable)ことと便利である(Useful)ことはまったく異なる概念なのです。「だって便利でしょ?」という曖昧な基準で操作方法が追加されると、マニュアル的にも「これでもできます、あれでもできます」と書かざるを得ません。結局のところ操作説明も煩雑になってしまい、ユーザーに不要な圧迫感を与えることになります。

操作の柔軟性とは、例えば複数のパラメーターを設定する必要がある場合などに、できるだけ設定順序に自由度を持たせるなど、システムがユーザーの操作の幅に対する許容度を持つことが本来の趣旨のはずです。より一般化して定義するならば、ユーザーがその製品に対して多少誤った操作モデルを頭の中に構築していても、システム的に対応できるような仕組みということになるでしょう。以前とりあげた自動券売機の操作仕様の問題などは、柔軟性の欠如しているシステムの最たる例といえます。だからといって適当な対処法を後付けしていくと、一見柔軟性が確保されているように見えて、実は煩雑で使いにくいシステムができあがってしまいます。

このように考えると、操作の柔軟性を入念に設計/実装することは、とても困難な作業であることがおわかり頂けるかと思います。しかし現実は、あとから適当につぎはぎしたような操作体系を指して「操作の柔軟性が〜」などと開き直られる始末。本当に困ったものです。え? 「その類の誤った柔軟性の例を教えて欲しい」ですって? え〜と、Windowsでソフトウェアを起動する方法は一体何種類ありましたっけ?(微笑) (2001.04.19)




増え続けるコントロール____見出し罫線____

最近発表されたMicrosoftのOffice Keyboard、ご覧になりましたか? Microsoft Office使用時に最適な、切り取り(カット)、コピー、貼り付け(ペースト)キーまで含む、便利な特殊キー(鬱)のオンパレード! 標準的なキーボードも併売しているので、Office Keyboardのような形態を完成形態と考えているわけではないであろうことが救いですが、「あ〜あ、やっちまったよ」というのが素直な感想です。

好き嫌いはともかくとして製品の機能は増え続けているわけですから、それらを破綻なくユーザーに見せ、操作してもらうようにするかは、どこのメーカーも頭を抱えていることと思います。ですが、ボタンやキー、つまみといったコントロールを単に増やすというのは、もっとも安易で唾棄すべき方策です。ついでに家電製品で何でもメニュー方式をとるものもありますが、あれもダメダメ度合いで良い勝負ですね(苦笑)。

コントロールの数を絞り込みつつ、ユーザーを迷わせることなく多彩な機能を利用できるようにするのが、プロダクトデザイナーの仕事です(品質感の高い造形デザインは当然の前提です)。今回の例のキーボードであればファンクションキーがすでに存在するわけで、安易なコントロールの増設よりも、ファンクションキーをもっとOSレベルでプログラマブルな形で提供するとか、外付けテンキーのようなエクステンションとして提供するとか、いろいろな方策があると思うのです。Office Keyboardを見ると、同じ機能を実現するためにやたら多くの選択肢を用意しているWindowsや、ホイールだけでなくプログラマブルなキーまでついているマウスと同様、Microsoftの独りよがりの設計思想が変わっていないことを痛感させられます。

操作の柔軟性やユーザーの要求に応えるという物作りの基本を、Microsoftは相も変わらず勘違いしているようです。当研究所としては、こういった文化を持つ会社の製品が世の中にあふれることで、未来の物作りに携わるべきユーザーまでが、誤った信条を持ってしまうことを危惧しています。Microsoftに期待するだけ無駄なのでしょうが、いちおう言っておくということで(苦笑)。 (2001.08.20)



前の発表へ 一覧に戻る 次の発表へ