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情報大工のひとりごと

読書の時間(4)



大本営参謀の情報戦記 − 情報なき国家の悲劇____見出し罫線____

大本営参謀の情報戦記本日ご紹介するのは、堀 栄三 著「大本営参謀の情報戦記 − 情報なき国家の悲劇」です。
戦争末期に情報参謀として米軍の作戦行動を次々に読み当てたことから「マッカーサー参謀」との異名を取った著者が、「情報を収集し、判断するとはどういうことか」について自らの豊富な経験をまとめたものです。
情報(information)というよりも諜報(intelligence)的な話が多く、戦記に詳しくない方には多少取っつきにくいかもしれません。ですが、著者自らがまえがきで「企業でも、政治でも、社会生活の中でも情報がきわめて重要な役割を占めている今日〜」と記している通り、本書の内容は軍事だけでなく、広く社会一般に対して大いに価値があるといえます。

実際に「個々の情報はつかんでいたのに問題の全体を予測できず、あとで地団駄を踏むことになった」とか「将来の技術動向はこうなると情報を入れておいたのに、意志決定時にまったく判断材料にされなかった(で、案の定失敗した)」などという苦い経験をお持ちのかたには、特におすすめです。安価な文庫本ですので、多くのかたに読んでいただければと思います。(ISBN4-16-727402-7、文春文庫476円+消費税、→amazon.co.jpでの購入はこちら)(2001.01.04)




ワーキング・ナレッジ − 『知』を活かす経営____見出し罫線____

ワーキングナレッジ本日ご紹介するのは、トーマス・H・ダベンポート/ローレンス・プルサック 著「ワーキング・ナレッジ − 『知』を活かす経営」です。
現在出回っているナレッジマネジメント関連の書籍は、どうも内容が薄かったり特定の1企業の運用ケースにとらわれすぎているように思ったことはありませんか? この書籍は知識とデータ、情報との違いといった概念的な話から、知識の形式化や知識移転のプロセス、そしてナレッジマネジメントのための組織体制や支援技術といった実務的な話に至るまで、ナレッジマネジメントの幅広いポイントを押さえています。

ナレッジマネジメント=ITという誤った認識がなかなか払拭できない状況はしばらく続きそうですが、こうした良書が数多く出回ることで、組織のトップだけでなく現場レベルでも質の高い議論が進むことを期待したいものです。胡散臭そうな書籍が多く出回っているこの分野の中で、非常にまともな入門書と言えるでしょう。(ISBN4-8201-1697-5、生産性出版、2800円+消費税、→amazon.co.jpでの購入はこちら)(2001.02.05)




経験価値マーケティング____見出し罫線____

経験価値マーケティング久しぶりの書籍紹介コーナーです。かなり以前に読了したものの紹介を躊躇した、バーンド・H・シュミット 著『経験価値マーケティング』です。「経験」という概念を鍵とした書籍では、以前「User Experienceという価値 」で取り上げた『経験経済 エクスペリエンス・エコノミー』と現時点で双璧をなしています。

基本的には、「F&B(Feature&Benefit)、つまり特性と便益を基づいた製品作り、マーケティングの限界が現在見えてきている。これを乗り越えるのは、消費者が製品なりサービスなりとの関係を通して何を経験するのかという、経験価値に注目する必要があるのではないか」というのが著者の主張になります。要するに、カタログスペックでライバルを凌駕することが販売にそのまま結びついた時代はもう終わり、ということです。

本書では、経験価値の種類としてSENSE(感覚)やFEEL(情緒)、THINK(創造・認知)、ACT(肉体、ライフスタイル)そしてRELATE(準拠集団や分化との関連)という5つのカテゴリーを提唱して、具体的な事例分析や評価を行っています(最初に「紹介すべきかどうか悩んだ」というのは、事例が牽強附会なんじゃないの?とか、その事例はイタすぎません?というのが結構あったからなのですが . . . )。

とりあえず、経験価値という概念について興味をお持ちのかたにはお勧めといえるでしょう。(ISBN4-478-50172-6、ダイヤモンド社、2200円+消費税、→amazon.co.jpでの購入はこちら)。そうそう、経験価値という概念について詳しく知りたいというかたは、電通の「経験価値フォーラム」もお勧めです(リンク集には次回追加予定です)。(2001.07.02)





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