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情報大工のひとりごと

閉塞気味のマニュアル業界を考える



単なる不況の影響というよりは(以下略)____見出し罫線____

「昨年からマニュアル制作の仕事量が減少傾向に転じている」という話を耳にすることが増えてきました。実際にメーカーがラインナップをかなり絞り込んでいる訳ですから、ある意味で当然といえるでしょう。また、リストラによる人余り対策として、メーカーによる内製化の話が出ているところもあるようです。内製化は以前の円高不況時にも流行って、あっという間にポシャった(簡単そうで実はそうじゃなかった)前歴があるのでそれほど心配していないのですが、メーカーは子会社への発注を増やすことで連結グループ外への資金の流れを絞るでしょうから、独立系の制作(印刷)会社に厳しい状況は続くでしょう。

ところで、マニュアル制作会社に求められているのは、

  1. 品質の高いマニュアル制作
  2. 大量の派生機種の同時展開にも耐えられる、制作キャパ
  3. 同じものをより早く、より安く制作できるローコスト対応力(その裏付けとなる合理的な制作システム)

この辺りになる訳です。

不景気によって、量をこなすこと(2)が以前と比較して重要でなくなってきた以上、必然的にある程度コストをかけて良いものを作る(1)のか、あるいは徹底的にローコストオペレーションを狙うのか(3)というように、対象商品によって要求されるものが二極化してくるはずです。そして後者に関しては、DB連係やワンソース展開などの制作システムを刷新して対応するか、あるいは零細事業者を安く使い倒す(苦笑)しかなさそうです。先にあげた1〜3の中でひたすら2と3を重視していたような会社(特に印刷会社の制作部門に多く見られる)は、いまかなりきつい状況に陥っているのではないでしょうか。

多国語マニュアルは遅かれ早かれ海外制作に移行するでしょうから、問題は日本語と(翻訳元の)英語のマニュアルを、どれだけの品質で制作できるかが勝負になると思われます。単に品質というよりも、マニュアルを通したコミュニケーション戦略を提案していったり、マスターとなるフォーマットやひな形を提案制作する側にまわらないと、しばらくはコスト勝負の持久戦を強いられることになるでしょう。

現在のところは品質とコストによる淘汰段階かと思われますが、これがさらに進んで、ある程度の品質のマニュアルを制作できる所同士の叩き合いまで始まると、業界の活力的にはかなりヤバいところまで来てしまいそうです。というか、叩き合いが本格化すると、大規模な制作会社はかなり厳しい運営を迫られるような気がします。受注産業で供給過剰なのですから、まあいろいろと大変な建設業みたいなものでしょうか。取りあえずのところ、「お互い頑張りましょう」というしかないですよね。う〜ん、ネガティブ。(2002.02.26)




マニュアルのデザインは軽視される一方____見出し罫線____

最近の制作現場では、制作効率が優先されるあまりに、デザインに対する制約がかなり厳しくなってきています。

制作に使用するアプリケーションソフトはメーカーから指定されるのが常ですが、生産性向上という名目でソフトを変更することが最近多いのです。そのせいもあって、デザイン面での裁量の余地がかなり狭くなってきています。裁量余地が狭いということは、逆に工夫するための腕の見せ所という面もあることも確かなのですが、例外的でトリッキーな処理を多用すると、そもそも生産性向上を期して導入した制作プラットフォームの意味がなくなってしまうため、なかなかうまくいかないのが現実です。生産性重視のアプリケーション導入を強いる一方で、例外処理を多用したデザインを求める「?」なメーカーもありますが、そうした「わかってないなあ」という担当者を抱えているところも多いようです。

こうした縛りを別にしても、そもそもマニュアルのデザインを理解し、適切に評価できる人が少なくなってきていることも大きな問題です。「コスト制限による紙面の最大活用が要請される」といえば聞こえが良いものの、要するに単なる詰め込みレイアウトが主流になってきたあたりから、この傾向が強くなっているようです。全体のレイアウトバランスという大きな部分から、ディテールの見せかたといった細かい部分まで、デザインの話がわかる(できる)担当者がかなり少なくなってきています。以前にも取り上げたように、低レベルのデザインに慣れてしまったせいか、まともな評価がなされていない(というか、できない)状態です。

これではデザイナーの能力など正当に評価される訳もなく、デザイナーは実際のところDTPオペレーター扱いされていることが多いようです。当然業務へのモチベーションなど維持できるはずもなく、マニュアル制作の世界を離れていってしまうというわけです。お約束とは言え、優秀な人こそ、この傾向が強いのが頭の痛いところです。ある程度替えの効くライターと違って、しっかりしたデザイナーは替えが効かない人材なのですから、できるデザイナーはくれぐれも大切にしたいものです。

この辺の話は前から思っていたのですが、とあるメーカーの結構良いデザインをするデザイナーさんが別部署に異動してしまったという話を聞いて、あらためて実感した次第です。(2002.03.25)



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