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情報大工のひとりごと

2002年を迎えて(2002.01.01)

あけましておめでとうございます。

昨年は多くの読者の方にお越し頂き、本当にどうもありがとうございました。本年もラプラス取説研究所をよろしくお願い申し上げます。

業務多忙で年末に更新が滞った分をリカバリーすべく、今回は新年スペシャル大増強版でお送りしたいと思います。



Webユーザビリティ____見出し罫線____

ユーザビリティという概念は、Webの世界でしっかり市民権を得た感があります。ですが、実制作に当たって正しく運用されているかということになると、まだまだ「?」という感が付きまといます。

年末商戦で盛り上がるプリンタを扱っているメーカーのサイトを見ればよく分かります。例えば製品一覧のページを見ただけで、購入したいプリンタのおおよその見当を付けられる(それぞれの機種の特徴を把握することができる)メーカーがどれほどあるでしょうか。型番だけ並べられているのでは、結局ユーザーがそれぞれの機種のページをすべて閲覧して、自分にあった機種を探さなければなりません。紙媒体と異なり、Webサイトは情報の一覧性に難があることは以前から明らかなのですから、これは情報が適切に構成されていないことになります。つまり製品一覧の段階で、閲覧すべき情報を絞り込ませるための工夫が必要になります。

この辺の問題はテレビを扱っているメーカーのWebサイトではよくできていることが多いようです。例えば、画面のサイズやBSデジタル対応といった、ユーザーが商品選びの目安としている機能から対応製品一覧を絞り込んで表示するといった構成ですね。プリンタを扱っているメーカーの例では、ちょっと不満はあるものの、キヤノンのWebサイトはこの点が考慮されていると言えるでしょう。

また、プリンタのWebサイトを見ていていつも感じるのは、業務用とコンスーマー用を別ページに分類することにどれほどの意味があるのか?ということです。商業デザインをしている会社が、必ず業務用のプリンタを購入するとは限りません。業務用のローエンド機種とコンスーマー用のハイエンド機種が購入比較対象になることはよくある話で、電機メーカーが重電部門と民生部門を分けることとは話が違うのです。外資系のIT関連機器メーカーはこういう分類をお好みのようですが、ユーザーのニーズに適合していないのではないでしょうか。このサイトで何度も繰り返しているように、メーカーの社内体制の都合で情報を分類することは、ユーザビリティとはもっともかけ離れた考え方だということを、早く理解してほしいものです。




意味不明の改札機____見出し罫線____

ところで、ユーザビリティという考えかたがWebの世界で市民権を得るようになった一方で、実世界では相変わらず使いにくい機器や設計がはびこっています。

身近な例を挙げるならば、小田急電鉄に最近導入された新型自動改札機でしょうか。これはJRのSUICAに対抗したいのかどうかはわかりませんが、パスネットカード(私鉄系の共通プリペイドカード)と定期券を重ねて投入することができることを売りにしています。利用者にとっては、定期券による乗越し清算処理が便利になるということです。

で、この新型の改札機には、既存の自動改札機と見分けるためにステッカーが貼ってあります。なんですが、貼ってある場所がなんと改札機の上面。これでは改札機に向かって歩いてきた利用客の視点からすると、乗車券を投入できる位置まで来てみないと新旧どちらの改札機なのかわかりません(苦笑)。新型のつもりで歩いてきたのに、直前で気付いて精算機へ逆走なんて、ラッシュ時や乗客が多い改札口でそんな悠長なことが許される訳がありません。

ちっとも改善されない特急券券売機といい、JR線との連絡改札対応のお粗末さといい、小田急電鉄が関わるものは、どうも使い勝手がよろしくありませんな。根本的な設計思想からして、もうちょっと考えて欲しいところです(というか、納入メーカーの皆様、もっとちゃんと仕事してください。当研究所の所員も含めて、利用客が迷惑してます)。




厳しい状況が続くマニュアル業界____見出し罫線____

さてマニュアル関連の方に話を移すと、暗い話ばかりが目立ちますね。業界的にも閉塞感が漂っているように思えます。この厳しいご時世の関係で、メーカーは製品のラインナップを相当絞り込んでいるようですし、個別機種のコストダウン要求もかなり厳しくなっています。

無駄を省いて制作効率を上げるという観点から、制作ワークフローの見直しについても各社で再検討が進んでいるようです。ですが、このご時世に大規模な制作システムの入れ替えを主眼とするのは、問題の所在を取り違えているような気がします。いろいろなメーカーを見てみても、制作システムそれ自体よりも、ワークフローや各組織との連携に問題を抱えていることの方が多いのではないでしょうか。

コストダウンに関しては、制作システム側のみで対処できる、基本的な部分での対策はあらかた行われているのが実情でしょう。現段階では、メーカー主導で無理な新制作システムを導入しても、初期導入コスト分を回収する前に制作会社が潰れてしまう(全然シャレになってませんな)可能性の方が高いような気がします。以前にも取り上げたことがありますが、既存システムのままで各制作会社の裁量範囲を広げ、その中で各社の独自工夫でコストダウンを狙う方が現実的ですし、より高い効果を期待できるのではないでしょうか。




目に見えない価値とアカウンタビリティ____見出し罫線____

不景気ネタ関連では、費用対効果に対するアカウンタビリティがより厳しくなることも予想されます。

わかりやすさや使いやすさ、さらには最近注目のユーザー・エクスペリエンスなどといった価値は、とにかく目に見える形として測定することが困難です。他社との差別化を計る上ではこうした価値を追求せざるを得ないわけですが、より納得できる形で効果を示すにはどうすれば良いのか、説得力を持つ測定方法や論拠について、各社で知恵を絞らなければならなくなりそうです。

実際問題として、予算を投入すれば良いものができるのは当たり前ですが、予算は限定されているわけです。従って、どの程度の予算でどの程度の機能を実装すれば、お客さまと最終的にシステム(やマニュアル)を利用するユーザーにとってベターであるというバランスを提案できる、コンサルティング的なセンスが今まで以上に必要とされるでしょう。で、こうしたセンスを養うためにも、ユーザーのコンテクストを重視する情報大工の視点がますます重要になることは間違いありません。

. . . おあとがよろしいようで(笑)



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