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情報大工のひとりごと

インターフェース設計あれこれ(4)



音質調整はメニューから? ご冗談を!____見出し罫線____

研究所長には突発性難聴から聴力が元に戻らない家族がいるため、音響設備(というかラジカセ)選びも大変です。 え?二年半前からまだ探しているのかって? 良く覚えていらっしゃいますね、その通りでございます(苦笑)。

さて、聴覚に問題があると、それこそ曲ごとに頻繁に音質調整をしたいというニーズがあるようです(曲によって聞こえたり聞こえなかったりの差が激しいようです)。そうすると、いかに音質調整機能にスムーズにアクセスできるかが重要になりますから、低音域と高音域を独立して、直接に調整できる仕組みを持つ商品を選ぶ必要があります。ところが、最近のラジカセには高音域と低音域の独立した音質調整つまみを持つものは存在しないのです。いわゆるマイクロコンポのクラスまで目を向ければ独立したつまみを持つものも存在するのですが、価格帯としてラジカセの代替感覚というわけにはいきません。それにマイクロコンポといえども、普及価格帯の商品は低音増強機能だけのものの方が多いのです。

さて、そんなこんなで音質調整機能の有無と操作性を確認するために秋葉原中を駆けめぐったのですが、音質調整をメニュー操作で行う商品があることには驚きました。メーカーの設計者の発想としては、設置スペースを固定しているので音質調整機能には頻繁にアクセスされることがないという前提なのかもしれませんが、聴覚に問題があるユーザーにとっては前提条件がまったく異なるため、お話になりません。また、音質調整がデジタル化されているために、あとどれくらい調整範囲に余裕があるのかをすぐに確認できないものもあり(これは音量も同様ですね)、かなり厳しい商品選択を余儀なくされました。

確かに、現在の商品の方がコストダウン的には都合が良いのでしょう。しかし、実装がユーザーの利益につながらないのであれば、機能の存在自体に疑問符がつきます。要するに、ユーザーが使用する現場で役に立たない機能であるならば、その分を削ってコストを下げた方がマシということです。このような問題は、そもそも「その機能がなぜその商品に必要なのか? どんなときに使われるのか?」ということを意識せずに設計プロセスが流れてしまうことに原因があるのではないかと思われます。これはハードウェア商品設計だけでなく、ソフトウェアやWebサイトの設計にも共通する問題ですが、こうしたことをどれだけ意識して設計作業が行われているか、現状の設計プロセスを問い直してみる必要があるのではないでしょうか。(2001.10.09)




直接操作という考えかた@SEGWAY____見出し罫線____

盛り上がり時期を外したようでなんなんですが、コードネーム「ジンジャー」として世間を騒がせていたデバイスがついに登場しましたね。「絶対に倒れない」という姿勢制御や、超時間駆動を可能にするバッテリーなど注目すべき技術はいろいろあるかと思いますが、当研究所としてはUIの側面、つまり操作(運転)方法に興味を持ちました。

実際に乗っている状態の動画ファイル(ダウンロードページ)を見ていただければおわかりになるかと思いますが、ユーザーの姿勢(重心移動)で前進/バックをそのまま制御できる(前進したいときは前傾姿勢)ようになっています。さすがに左右方向の指示は他の乗り物同様にハンドルで行うようですが、前進/後退に関してはデバイスの介在なしで、乗り手の意思を忠実に反映できるようになっています。これは直接操作UIとしてかなり面白く、良くできているのではないかと思います。

操作で指定しなければならない機能数のレベルがまったく異なるSEGWAYと比べるのは酷ですが、直接操作の世界から遠く離れたところに行ってしまった家電やパソコンのUIにも、こうしたブレークスルーが期待できるのでしょうか。スイッチやボタンなどのコントロールの数が多くなりすぎると極端に操作性が低下することもあって、家電製品やパソコンではできるだけ少ないコントロールで数多くの機能を制御する方向に向かっています。これは直接操作と比較して、間接操作というコンセプトを採用しているといえるでしょう。メーカー各社はコンテクストに応じた自動化/操作の絞り込みや音声認識などによってユーザーの負荷軽減を狙っているようですが、自動化がユーザーの意思を忠実にトレースすることは困難で、どうしても人に背中をかいてもらうようなまどろっこしさがつきまといます。自動化のアルゴリズムとユーザーの意思が一致したときは良いのですが、外したときのイライラ感はかなりのものがあるでしょう。

ユーザーの意思を確実に体現するには、やはりユーザーの操作によるものが一番なのです。操作の煩雑性を回避しつつユーザーの手間を省くために、直接操作という考えかたをもう1度見直すべきときに来ているのかもしれません。(2001.12.10)



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