読者の声(3)
制作支援としてのデータベース
「マニュアル制作データベース?」に何件かご意見をいただきました。どうもありがとうございます。
確かにコンスーマー向けのマニュアルをデータベースで制作するのは難しそうですね。でも、英文原稿を自分で制作しなければならないときなどは、過去モデルの和文とその対訳を参照できるようなデータベースがあったら便利だなあと思っていますが、いかがでしょう?(文意を元に編集しています)
確かに定型的な言い回しに関しては、データベース(というよりもむしろストックといった方が良いのでしょうか?)の有効な活用法がありそうですね。
ただし、このような使用法を想定するならば、現在使用しているソフトウェアから直接に文例を参照できるような機能が必要になってくると思います。
わからない文章に出くわしたときにいちいち別のアプリケーションで検索をかけていると、かえって実制作の手間になってしまう可能性もあります。DTPソフトウェアかエディタのプラグインなどで対応できるようなものであればベストなのですが . . . 。
当研究所でもこのような機能(主な文例をプールしておいて必要なときに参照/ペーストできる)を持つ制作支援ツールが存在するのであれば、ぜひ導入を検討してみたいところです。多国語展開のための翻訳ツールとしてはそのようなものがすでに存在するようですが、中小規模の事業者でペイできる、もっと気軽なものを探してみたいところです。
というわけで、どなたかそのようなツールをご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当研究所までご連絡くださるようお願いいたします(笑) (1999.04.16)
翻訳支援としてのデータベース
「マニュアル制作データベース?」にいただいた他のご意見も紹介させていただきます。
多言語の取説制作の際に、元の英文を何も考えずに翻訳に出すと「何から何まで好き勝手に訳される」ことがよくあります。
パッケージやカタログ、そして法務部門をはじめとする関連部門との取り決めなどを無視されてしまうと、後で重大な問題にもつながりかねません。こういう用途ではデータベースを利用する意味があると考えますが、いかがでしょう?(文意を元に編集しています)
確かにこの面ではデータベースないしは用語ルール集的なものの存在が不可欠だと思います。事前に翻訳者に対して用語ルール集などの徹底ができるのであれば良いのですが、なかなかそうも行かないのが実状でしょう。
当座の対策として、定型文ないしはメーカーの法務がチェック済みの文面に関しては、最初から翻訳指定しないなどの対策が必要になってくると思います。
翻訳支援としてのデータベースという観点では、過去の使用語彙を集めたデータベースと連動する翻訳支援システムというものも存在するようです。従って、そのようなシステムを導入している翻訳会社と契約することで、表現の揺れをある程度防ぐことができる可能性もあります(ただしデータベースはメーカーごとにカスタマイズする必要がありますので、ある程度量を出さないと品質が安定しないという話も聞きます)。
しかしこういった翻訳ツールに依存しすぎると、翻訳会社に必要以上のパワーを与えてしまい、それがメーカーの手足を縛ってしまうことにつながりかねません。
そうかといって、どんな業務でもメーカー内で抱え込むというのはあまり現実的ではないでしょう。そこで、基本的な語彙に関してはメーカー側で用語ルール集的なデータベースを制作し、翻訳会社側のデータベースとの同期をどう維持していくかに知恵を絞るのがよろしいかと思います。 (1999.04.30)
グライスの公準
以前の研究発表でグライスの公準というものを持ち出したことを覚えていらっしゃいますでしょうか? この公準がマニュアル制作分野で有用であることは疑いないにしても、元の公準が果たしてどの学術分野のものであるのか未だに不明で、気味の悪い思いをしておりました。
ところが先日、いつも鋭い指摘をしてくださる読者の方から「グライスの公準(Maxim)というのは語用論(Pragmatics)の分野の用語ですよ」というありがたいメールをいただきました。語用論ということは、認知科学というよりもむしろ言語学からの派生理論だったというわけですね。
というわけで語用論の入門書(汗)を購入し、現在研究中です。
グライスの元々の意図としては「会話における字句通りの意味に付加される含意」について研究するために、その前提となる「字句通りの(意味が一義的に限定される、つまり誤解の余地がない)会話が成立するための条件」を提示するために提唱したものであったようです。
しかし、マニュアルなど情報伝達を主要な目的とする分野では、含意といった行間を読ませるような方法で情報を伝えるようなことはあってはなりません。日常生活では含意のない会話は面白くないかもしれませんが、マニュアル制作者としてはグライスの公準だけをうまく利用すれば十分でしょう。
全体像がもう少し見えてきたところで、該当の研究発表を大幅にリライトして公開したいと思います。ご期待ください。 (1999.08.30)
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